東北の葬儀事情 前火葬(骨葬)の地域差と告別式の香典、6県の火葬場
この記事の要点
- 葬儀の前に火葬する「前火葬」は青森・岩手・秋田に多く、福島では少ないと報告されている。
- 香典を告別式に持っていく人が55.5%で、通夜を上回るのは全国で東北ブロックだけ。
- 6県の県庁所在市の火葬料は市民が無料〜1万円。青森・秋田・山形の3市は市民無料。
目次
東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)では、2025年に12万8,569人が亡くなりました。人口千人あたりの死亡は秋田県が19.1人で全国で最も多く、青森・岩手・山形も全国上位5県に入ります。稼働している火葬場は167か所で、1か所あたりの死亡数は770人と、全国平均(1,177人)より少なくなっています。
葬儀の進め方にも東北らしさがあります。葬儀の前に火葬をする「前火葬(骨葬)」は、青森・岩手・秋田に多いと報告されています。香典は告別式に持っていく人のほうが多く、全国の地域ブロックで東北だけの特徴です。この記事では、公的な統計と研究報告、各市の公表資料から、東北の葬儀事情をまとめます。
6県の死亡数・火葬場・葬祭費
厚生労働省の人口動態統計(2025年確定数)と衛生行政報告例(2024年度末)の数字です。葬祭費は、各県の後期高齢者医療広域連合の公表額です。県名から、それぞれの都道府県ガイドに進めます。
| 県 | 死亡数(2025年) | 火葬場(1か所あたり) | 葬祭費(後期高齢者医療) |
|---|---|---|---|
| 青森県 | 20,090人 | 36か所(558人) | 5万円 |
| 岩手県 | 19,529人 | 30か所(651人) | 3万円 |
| 宮城県 | 28,202人 | 27か所(1,045人) | 5万円 |
| 秋田県 | 16,717人 | 25か所(669人) | 5万円 |
| 山形県 | 16,856人 | 24か所(702人) | 5万円 |
| 福島県 | 27,175人 | 25か所(1,087人) | 5万円 |
| 6県 | 128,569人 | 167か所(770人) | ― |
(火葬場は2024年度末に過去1年以内の稼働実績があるもの。1か所あたりは2025年の死亡数を火葬場の数で割った、編集部の計算)
1か所あたりの死亡数が全国平均を下回るのは、6県とも同じです。多いのは福島県と宮城県で、どちらも1,000人を超えています。47都道府県の比較は「47都道府県の火葬場の数と混み具合」にまとめています。
死亡率は全国上位、増え方はゆるやか
人口千人あたりの死亡(2025年、概数)を見ると、東北の県が全国の上位に並びます。
| 県 | 人口千人あたりの死亡 | 全国の順位 | 10年前からの増加 |
|---|---|---|---|
| 秋田県 | 19.1人 | 1位 | 13.0% |
| 青森県 | 17.7人 | 2位 | 17.2% |
| 岩手県 | 17.5人 | 4位 | 18.3% |
| 山形県 | 17.1人 | 5位 | 12.7% |
| 福島県 | 16.0人 | 12位(3県が同率) | 12.3% |
| 宮城県 | 12.8人 | 39位 | 22.2% |
(全国は13.3人・23.2%増。死亡率は2025年の概数で、確定数の率は2026年11月に公表予定)
人口に比べて亡くなる人が多い県が並びます。一方で、亡くなる人の数の増え方は、6県とも全国より緩やかです。山形・福島・秋田の10年の増加率は、47都道府県で少ないほうから5〜7番目でした。
国立社会保障・人口問題研究所の推計(2023年)によると、東北6県の75歳以上の人口は2035年ごろが最も多くなります。その後は減る見通しです。秋田県は、2050年の75歳以上の人口が2020年を下回る、全国でただ一つの県とされています。将来の全国の見通しは「死亡数の将来推計」をご覧ください。
葬儀の前に火葬する「前火葬(骨葬)」
全国で多いのは「通夜→葬儀・告別式→火葬」の順番です。東北には、「通夜→火葬→葬儀・告別式」の順で進め、お骨になってから葬儀をする地域があります。これを「前火葬(まえかそう)」や「骨葬(こつそう)」と呼びます。
| 型 | 順番 | 葬儀の祭壇 |
|---|---|---|
| 後火葬(全国で多い) | 通夜→葬儀・告別式→火葬 | 棺(ご遺体) |
| 前火葬・骨葬 | 通夜→火葬→葬儀・告別式 | お骨 |
どの県に多いか
国立歴史民俗博物館の研究報告(関沢まゆみ、2015年)は、東北6県の葬儀社へのアンケートの結果を紹介しています。
- 前火葬は、青森県・岩手県・秋田県に多い
- 宮城県・山形県では少なくなり、同じ県の中でも地域で違う
- 福島県では少ない
- 仏教の特定の宗派との関係はみられない
同じアンケートでは、「骨葬」という呼び名を使わない葬儀社が多かったそうです。先に火葬するのが当たり前の地域では、わざわざ名前をつける必要がないためと考えられています。研究報告には、東北で「東京では遺体を焼かないで葬式をするのはなぜか」と疑問に思う人も少なくない、という記述もあります。
なぜ先に火葬するのか
アンケートでは、時間の都合のよさや、早く火葬することによる衛生面が理由に挙がりました。研究報告は、東北には死者を囲んで2〜3日にわたる長い通夜の習わしがあったと述べています。遺体の傷みを防ぐことが、先に火葬する背景の一つと考えられるそうです。
東北の村落で火葬が広まったのは、昭和30年ごろとされます。研究報告は、先に火葬する地域では葬儀の当日に納骨するなど、土葬のころの習わしがよく受け継がれていると述べています。
ポイント
前火葬の地域では、故人の顔を見てお別れできるのは火葬の前までです。遠くに住む親族には、通夜や葬儀の日だけでなく、火葬の日時も早めに伝えます。逆に、ほかの地方の葬儀では、祭壇に棺があり、火葬は葬儀のあとになることが多いと知っておくと戸惑いません。
全国の地域差は「地域で違う葬儀のしきたり」、一般的な流れは「お通夜・葬儀・告別式の流れ」にまとめています。
香典は告別式に持っていく人が多い
全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の「第6回香典に関するアンケート調査」(2021年度)の結果です。東北ブロックの回答は582件でした。
| 項目 | 東北 | 参考:北海道 |
|---|---|---|
| 香典を告別式に持参 | 55.5% | 6.6% |
| 香典を通夜に持参 | 41.9% | 92.7% |
| 告別式だけに出席 | 37.6% | 6.6% |
| 通夜だけに出席 | 34.2% | 60.6% |
(全互協の地域別の集計を加工して作成。出席の割合は回答件数から編集部が計算)
告別式に持参する人が通夜を上回ったのは、10の地域ブロックで東北だけでした。2016年度の前回調査でも、告別式が50.5%と半分を超えています。全互協は、東北では告別式を重く見る傾向がうかがえると説明しています。
香典の金額は、職場関係・友人・近所とも最も多い答えが5,000円でした。関係ごとの目安は「香典の金額相場」で調べられます。
補足
この調査の東北ブロックの回答は、山形県223件・福島県210件が大半で、青森・岩手・秋田は合わせて73件です。互助会が受けた葬儀に来た人への調査で、東北全体を表すものではありません。
葬儀費用と参列の人数
鎌倉新書の2024年の全国調査の都道府県別の平均を、編集部が東北6県でまとめ直しました(回答252件)。
| 項目 | 東北 | 全国 |
|---|---|---|
| 葬儀費用の総額 | 117.6万円 | 118.5万円 |
| お布施 | 28.2万円 | 22.9万円 |
| 受け取った香典 | 51.4万円 | 47.3万円 |
| 参列した人数 | 41.4人 | 38.9人 |
(鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」の都道府県別の平均を加工して作成。1県あたりの回答が少ないため目安です)
総額は全国とほぼ同じですが、お布施は全国より5万円ほど高く、10の地方で2番目に高い値でした。県別の総額は、秋田県の96.8万円から福島県の142.4万円まで開きがあります。お布施の考え方は「お布施の相場」をご覧ください。
県庁所在市の公営火葬場
6県の県庁所在市の、公営火葬場の大人の火葬料と休みです。
| 施設 | 住民 | 住民以外 | 休み |
|---|---|---|---|
| 青森市斎場 | 無料 | 40,000円 | 1月1日・8月16日 |
| 盛岡市斎場やすらぎの丘 | 10,000円 | 50,000円 | 年末年始・毎月第2日曜 |
| 仙台市葛岡斎場 | 9,000円 | 27,200円 | 1月1日・2日、6月に1日 |
| 秋田市斎場 | 無料 | 61,000円 | 1月1日、6・10月の第2火曜 |
| 山形市斎場 | 無料 | 38,000円 | 1月1日、年4日(友引の日から選ぶ) |
| 福島市斎場 | 10,000円 | 60,000円 | 1月1日〜3日・友引 |
(2026年10月時点の各市の公表料金。大人の年齢の区切りは市で違い、仙台市は6歳以上、山形市は10歳以上、盛岡市・秋田市は13歳以上)
青森・秋田・山形の3市は、市民の火葬料が無料です。友引の日を毎回休むのは福島市だけです。山形市は、年4日の休場日を友引の日から選んでいます。
各市の最近の動き
- 青森市: 建て替えた新しい斎場を2026年10月1日に使い始めました。同時に、市民以外の料金を15,000円から40,000円に上げています。市民かどうかは亡くなった人の住所で決めるようになりました。市外に住んでいた親を市民の子が火葬すると有料になる例を、市が挙げています。
- 仙台市: 市内で火葬ができるのは葛岡斎場だけです。2024年度は1万1,664人が利用し、年々増えています。
- 山形市: ふだんは1日14件までで、枠が埋まると市民に限り延長枠を足して16件まで受けます。2024年度に延長枠を使った日は24日でした。市は上山市・山辺町と共同で新しい斎場を建て、2035年度中の使用開始を目指しています。
- 福島市: 亡くなった人が市外に住んでいても、葬儀を主宰する人が市民なら市民料金になります。
自分の市町村の火葬場は、市町村のホームページで「斎場」「火葬場」と検索すると、料金と予約の仕方がわかります。
東北で葬儀をするときに確かめたいこと
- 火葬と葬儀の順番を確かめます。前火葬の地域では、お別れの時間は火葬の前です。親族への連絡では、火葬の日時を必ず伝えます。
- 亡くなった人の住所の火葬場と料金を確かめます。市民無料の市でも、住民以外は数万円かかります。青森市のように判定の基準が変わることもあります。
- 香典を渡す場面に合わせます。告別式で渡す人が多い地域ですが、どちらか一方で渡せば十分です。
- 葬祭費を申請します。期限は葬儀の翌日から2年です。宮城県の後期高齢者医療と仙台市の国民健康保険は、葬儀をしなかった場合も火葬を行った人に支給されます。福島市の国民健康保険は、3か月以上加入していた人が対象です。申請の仕方は「葬祭費の申請」、金額は「葬祭費しらべ」で確かめられます。
よくある質問
東北ではなぜ葬儀の前に火葬するのですか?
国立歴史民俗博物館の研究報告は、東北では死者を囲んで2〜3日にわたる長い通夜の習わしがあり、遺体の傷みを防ぐことが背景の一つと考えられると述べています。葬儀社へのアンケートでは、時間の都合のよさや衛生面も理由に挙がりました。特定の宗派との関係はみられないとされています。
前火葬の地域で、故人の顔を見てお別れできるのはいつですか?
火葬の前までです。葬儀・告別式では祭壇にお骨が安置されます。最後に顔を見たい場合は、通夜か火葬の前に伺えるよう、喪主側に日時を確かめてください。
東北では香典は通夜と告別式のどちらで渡しますか?
全日本冠婚葬祭互助協会の調査(2021年度)では、東北ブロックで告別式に持参した人が55.5%、通夜が41.9%でした。告別式のほうが多いのは全国で東北だけです。どちらか一方で渡せば十分で、両方に出るときは最初に参列したときに渡します。
東北6県の葬祭費はいくらですか?
後期高齢者医療の葬祭費は、青森・宮城・秋田・山形・福島が5万円、岩手が3万円です。国民健康保険は市町村ごとに決まり、仙台市・青森市・秋田市・山形市・福島市は5万円、盛岡市は3万円です。
出典・参考にした資料
- 令和7(2025)年人口動態統計(確定数)の概況・統計表厚生労働省(2026-10-07 確認)
- 人口動態統計月報年計(概数)令和7年 統計表(都道府県別死亡率)厚生労働省(2026-10-07 確認)
- 衛生行政報告例 令和6年度 第5表 墓地・火葬場・納骨堂数厚生労働省(e-Stat)(2026-10-07 確認)
- 日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)概要国立社会保障・人口問題研究所(2026-10-07 確認)
- 日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)結果表2-4国立社会保障・人口問題研究所(2026-10-07 確認)
- 火葬化とその意味:「遺骸葬」と「遺骨葬」(関沢まゆみ、国立歴史民俗博物館研究報告 第191集、2015年)国立歴史民俗博物館(2026-10-08 確認)
- 第6回 香典に関するアンケート調査(集計結果)全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-07 確認)
- 第6回 香典に関するアンケート調査(調査概要)全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-07 確認)
- 第6回お葬式に関する全国調査(2024年)都道府県別の葬儀費用株式会社鎌倉新書(いい葬儀)(2026-10-07 確認)
- 葛岡斎場仙台市(2026-10-07 確認)
- 指定管理者評価シート(葛岡斎場、令和6年度)仙台市(2026-10-07 確認)
- 青森市斎場青森市(2026-10-07 確認)
- 斎場使用料青森市(2026-10-07 確認)
- 議案第80号 委員会配付資料(斎場条例の改正)青森市(2026-10-07 確認)
- 盛岡市斎場やすらぎの丘盛岡市(2026-10-07 確認)
- 秋田市斎場秋田市(2026-10-07 確認)
- 秋田市斎場条例施行規則秋田市(2026-10-07 確認)
- 山形市斎場山形市(2026-10-07 確認)
- 新広域斎場整備基本計画(令和8年3月)山形市(2026-10-07 確認)
- 福島市斎場福島市(2026-10-07 確認)
- 福島市斎場の使用料福島市(2026-10-07 確認)
- 後期高齢者医療 葬祭費(青森県)青森県後期高齢者医療広域連合(2026-10-07 確認)
- 後期高齢者医療 葬祭費(岩手県)岩手県後期高齢者医療広域連合(2026-10-07 確認)
- 後期高齢者医療 葬祭費(宮城県)宮城県後期高齢者医療広域連合(2026-10-07 確認)
- 後期高齢者医療 葬祭費(秋田県)秋田県後期高齢者医療広域連合(2026-10-07 確認)
- 後期高齢者医療に関する条例(山形県)山形県後期高齢者医療広域連合(2026-10-07 確認)
- 後期高齢者医療 葬祭費(福島県)福島県後期高齢者医療広域連合(2026-10-07 確認)
- 国民健康保険の給付(葬祭費)仙台市(2026-10-07 確認)
- 国民健康保険 葬祭費盛岡市(2026-10-07 確認)
- 国民健康保険 葬祭費福島市(2026-10-07 確認)