施餓鬼供養とは 意味と由来、宗派ごとの時期と参加のしかた
この記事の要点
- 施餓鬼は、飢えに苦しむ餓鬼に飲食を施し、その功徳を先祖や亡き人に回す法要です。
- もとはお盆と別の行事で、今は多くの寺がお盆の前後に営みます。時期は宗派や地域で違います。
- 浄土真宗では営みません。参加するときは菩提寺に申し込み方と塔婆の有無を聞きます。
施餓鬼(せがき)供養とは、飢えと渇きに苦しむ「餓鬼」に食べ物や水を施し、そのよい行いの力(功徳)を先祖や亡くなった人に振り向ける法要です。自分の家の先祖だけでなく、供養する人のいない霊も含めて、すべての霊を供養するのが特徴です。寺で営むものを施餓鬼会(せがきえ)、親しみをこめて「お施餓鬼」とも呼びます。もとはお盆とは別の行事ですが、今は多くの寺がお盆の前後に営みます。浄土真宗では営みません。
案内の手紙が寺から届き、何をする行事なのか知りたい人に向けて、意味と由来、宗派ごとの違い、参加のしかたをまとめました。
施餓鬼供養の意味
「餓鬼」は、仏教で説かれる、いつも飢えと渇きに苦しむ存在です。食べ物を口に運んでも、のどを通らなかったり、火になったりして食べられないとされます。
施餓鬼供養には、次の3つの意味があると各宗派は説明しています。
- 餓鬼に施す。浄土宗は、本来の目的は餓鬼に飲食を施すことだと説明しています。
- 功徳を先祖や亡き人に回す。施した功徳を、先祖や縁のあった人に振り向けます(回向=えこう)。
- すべての霊を供養する。臨済宗の各派でつくる臨黄ネットは、先祖のためだけでなく「三界萬霊(さんがいばんれい)」の位牌を立て、縁のある霊もない霊もすべて供養すると説明しています。
日蓮宗の佐賀県宗務所は、施餓鬼は、供養する自分の中の欲や怒りの心を清める修行でもあると説いています。「自分の家のため」だけで終わらない行事だということが、どの宗派の説明にも共通しています。
由来は阿難(あなん)の話
施餓鬼の由来は、釈迦の弟子の阿難の話です。浄土宗は『救抜焔口餓鬼陀羅尼経(くばつえんくがきだらにきょう)』というお経に説かれていると紹介しています。
- 阿難が修行していると、口から火を吐く餓鬼が現れ、「お前の命はあと3日だ」と告げます。
- 餓鬼は、助かりたければ、すべての餓鬼と修行者に食べ物を施し、仏・教え・僧を供養するように言います。
- 阿難が釈迦に相談すると、釈迦は、餓鬼が食べられるようになる作法と、わずかな供え物を限りなく増やす呪文を授けます。
- その通りにすると餓鬼たちは救われ、阿難も命をのばしました。
天台宗は、施餓鬼は初めは命をのばす(延命・長寿の)法要だったものが、いつのまにかお盆と一緒に営まれるようになったと説明しています。
お盆(盂蘭盆会)との違い
施餓鬼とお盆は、同じ時期に営まれることが多いので混同されがちですが、由来の違う行事です。
| お盆(盂蘭盆会) | 施餓鬼会 | |
|---|---|---|
| 由来の話 | 目連(もくれん)が餓鬼道で苦しむ母を救う話 | 阿難が餓鬼に命の終わりを告げられる話 |
| 供養の相手 | 親や先祖 | 餓鬼と、縁のある霊もない霊もすべて |
| 時期 | 7月か8月の決まった数日 | 本来は決まっていない |
(日蓮宗佐賀県宗務所・天台宗・浄土真宗本願寺派の説明をもとに、みおくり手帖編集部が作成)
浄土真宗本願寺派は、2つはもとは別の法会で、江戸時代ごろに一緒になったといわれていると説明しています。お盆の前後に営む施餓鬼を「盆施餓鬼」と呼び、日蓮宗の佐賀県宗務所は、その年に初盆を迎える霊や先祖の供養が中心になると紹介しています。初盆については「初盆(新盆)の準備」にまとめています。
宗派ごとの呼び方と時期
施餓鬼会を営むかどうか、いつ営むかは、宗派や地域、寺によって違います。宗派の公式サイトなどの説明をまとめると、次のようになります。
| 宗派 | 呼び方・特徴 | 時期の例 |
|---|---|---|
| 天台宗 | 施餓鬼会。施食会(せじきえ)とも | 東京方面は7月、多くの地域は8月のお盆のころ |
| 浄土宗 | 施餓鬼会、おせがき | 5月から8月のお盆の前後に多い |
| 臨済宗 | 施餓鬼会。三界萬霊の位牌を立てる | お盆のほか、お彼岸に営む地域も |
| 曹洞宗 | 施食会(せじきえ)。寺の年中行事 | 先祖や新盆の供養を兼ねて営む寺も |
| 日蓮宗 | 施餓鬼会。いつ営んでもよいとされる | 7月・8月ごろが多い |
| 浄土真宗 | 営まない | ― |
(天台宗・浄土宗・臨黄ネット・曹洞禅ネット・日蓮宗の寺院ページ・浄土真宗本願寺派の説明をもとに、みおくり手帖編集部が作成。同じ宗派でも寺によって違います)
補足
浄土真宗で施餓鬼を営まないのは、教えの違いによるものです。浄土真宗本願寺派は、亡くなった人は阿弥陀仏の救いによってすでに浄土に生まれているので、冥福を祈る追善供養は必要なく、精霊棚も施餓鬼棚もいらないと説明しています。浄土真宗の家に施餓鬼の案内が届かないのは、そのためです。
全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)は、真宗を除く各宗派では、百箇日(亡くなって100日目)に先祖や無縁仏の供養もあわせて施餓鬼会を営むことがあると紹介しています。百箇日のことは「百箇日法要」で説明しています。
施餓鬼会ではどんなことをするか
作法は宗派や地域で違いますが、天台宗や臨黄ネットの説明では、おおむね次のような形です。
- 施餓鬼壇(せがきだん)を設けます。本堂の外側などに供物の壇をつくり、五色の旗(幡)を掛けます。
- 「三界萬霊」の位牌を置きます。すべての霊を供養するしるしです。
- 海の物・山の物、水、米を供えます。
- 僧侶がお経を読み、参列者が焼香します。
- 塔婆(とうば)を立てる寺もあります。供養のために、家ごとに卒塔婆を書いてもらうことがあります。
天台宗は、水難で亡くなった人のために、川に船を浮かべたり、水辺で法要をして紙の小舟や灯籠を流したりする寺もあると紹介しています。
寺の施餓鬼会に参加するとき
施餓鬼会は、菩提寺(家のお墓がある寺)から案内が届いて参加するのが一般的です。次の順で準備します。
- 案内の手紙を読みます。日時、塔婆の申し込みの有無と締め切り、施餓鬼料の扱いが書かれていることが多いです。
- 塔婆を頼むか決めて、申し込みます。締め切りが書かれていれば、それまでに寺へ連絡します。
- お金を用意します。全互協は、施餓鬼会ではお布施と施餓鬼料を供え、卒塔婆を立てると紹介しています。表書きや包み方を寺が指定していることもあるので、案内にそって用意します。
- 当日は法要に参列し、焼香します。服装は落ち着いた色の服にし、迷ったら寺に聞きます。
- 塔婆を受け取り、墓に立てます。寺の境内に墓がある場合は、寺が立ててくれることもあります。
ポイント
施餓鬼料や塔婆料の金額について、宗派の公式な目安や全国調査は見当たりません。寺によって、決まった額を案内する場合と、気持ちでよいとする場合があります。わからないときは「皆さんはどのくらい納めていますか」と寺に直接たずねてかまいません。お布施全般の考え方は「法要のお布施の相場」にまとめています。
参加できないときは、寺に連絡して、塔婆や施餓鬼料だけを納められるか聞いてみます。
菩提寺がないとき
菩提寺のない家は、近くの寺の施餓鬼会に参加できないか聞いてみる方法があります。
- 近くの寺の掲示やウェブサイトを見ます。「施餓鬼会」「施食会」「お施餓鬼」と、地域の名前で検索すると見つかります。
- 檀家でなくても参加できるか寺に聞きます。
- 宗派を確かめます。家の宗派がわかっているなら、同じ宗派の寺を選ぶと安心です。浄土真宗の家なら、施餓鬼ではなく、寺のお盆の法要(盂蘭盆会)に参ります。
施餓鬼は、亡くなった人を思うと同時に、自分と縁のない人にも心を向ける行事です。決まった作法を完ぺきに守ることより、寺の案内にそって、手を合わせる時間をもつことを大切にしてください。
よくある質問
施餓鬼供養とは、簡単に言うと何ですか?
飢えと渇きに苦しむ「餓鬼」に食べ物や水を施し、その功徳(よい行いの力)を先祖や亡くなった人に振り向ける法要です。自分の家の先祖だけでなく、供養する人のいない霊も含めて、すべての霊を供養するのが特徴です。寺で営むものは施餓鬼会(せがきえ)と呼ばれます。
施餓鬼とお盆は何が違いますか?
お盆(盂蘭盆会)は釈迦の弟子の目連の話に、施餓鬼は同じく弟子の阿難の話に由来する、別の行事です。浄土真宗本願寺派は、2つは江戸時代ごろに一緒に営まれるようになったと説明しています。今もお盆の前後に施餓鬼会を営む寺が多いため、混同されやすくなっています。
施餓鬼はいつ行いますか?
本来は日を決めずに営むものだと天台宗は説明しています。今は多くの寺がお盆の前後に営み、浄土宗は5月から8月ごろ、天台宗は東京方面で7月、多くの地域で8月と紹介しています。お彼岸のころに営む地域もあります。日程は菩提寺の案内で確かめます。
浄土真宗でも施餓鬼をしますか?
浄土真宗では施餓鬼会を営みません。浄土真宗本願寺派は、亡くなった人は阿弥陀仏の救いですでに浄土に生まれているので、冥福を祈る追善供養は必要なく、施餓鬼棚もいらないと説明しています。
施餓鬼に参加するとき、お金はいくら包みますか?
施餓鬼料の金額を示した宗派の公式な目安や全国調査は見当たりません。寺によって、決まった額を案内している場合と、気持ちでよいとする場合があります。案内の手紙を読み、わからなければ寺に直接たずねてかまいません。
出典・参考にした資料
- 施餓鬼会(せがきえ)天台宗(2026-10-23 確認)
- 施餓鬼会浄土宗(浄土宗新聞)(2026-10-23 確認)
- 施しの気持ちを持って 施餓鬼会浄土宗(浄土宗新聞)(2026-10-23 確認)
- 施餓鬼会臨済宗黄檗宗連合各派合議所(臨黄ネット)(2026-10-23 確認)
- 【法悦】施餓鬼会(せがきえ)臨済宗妙心寺派 妙心寺(2026-10-23 確認)
- お盆とお施餓鬼の由来を知っていますか?日蓮宗佐賀県宗務所(2026-10-23 確認)
- 施餓鬼(せがき)会の功徳日蓮宗尾張伝道センター(2026-10-23 確認)
- 【International】ワヒアワ龍仙寺に赴任して曹洞宗(曹洞禅ネット)(2026-10-23 確認)
- お盆の紹介(特集記事)浄土真宗本願寺派(2026-10-23 確認)
- お盆迎える心持ち浄土真宗本願寺派(2026-10-23 確認)
- お葬式のマナー:法要・供養はどのようにして行なうの?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-23 確認)



