葬儀の費用と形式

生前葬とは 目的と流れの例、会費制と香典の扱い、亡くなった後に必要なこと

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • 生前葬は本人の意思で生きているうちに開く葬儀形式の集まり。決まった形はありません。
  • 生前葬をしても、亡くなったあとの死亡届・火葬許可・火葬は別に必要です。
  • 香典はもともと死者に供える金品。会費制にして案内状に扱いを書くと迷わせません。
目次
  1. 生前葬とは 似た言葉との違い
  2. 生前葬を開く目的
  3. 生前葬の流れ(例)
  4. 招待状と会費の決め方
  5. 受け取るお金と税金
  6. 亡くなったあとに別に必要なこと
  7. 開く前に家族と話しておくこと

生前葬(せいぜんそう)は、本人が生きているうちに、自分の意思で開く「葬儀の形をとった集まり」です。お世話になった人に直接お礼を伝えたい、元気なうちに会っておきたい、という思いから開かれます。法律で決まった形式はなく、内容や呼び方は主催する本人が決めます。

注意したいのは、生前葬をしても、亡くなったあとの手続きは別に必要なことです。死亡届の提出と火葬の許可、火葬は、生前葬の有無にかかわらず行います。この記事では、生前葬の流れの例、招待と会費の決め方、受け取るお金の税金、亡くなったあとに必要なことをまとめます。

生前葬とは 似た言葉との違い

辞書(デジタル大辞泉)は、生前葬を「本人の意思で、または承諾を得て本人の生きている間に催す葬儀形式の集まり」としています。生きているうちに自分の死後に備える習わしは、ほかにもあります。

言葉 意味 生前葬との関係
生前葬 生きているうちに開く葬儀形式の集まり 宗教色の有無は自由
逆修(ぎゃくしゅ) 生前に自分の死後の冥福を祈って行う仏事 仏教の古い習わし
生前戒名 生きているうちに授かる戒名 菩提寺や宗派の寺で授かる
寿陵(じゅりょう) 生前につくっておく自分の墓 縁起がよいものとされる

(コトバンク収録の辞書・事典の生前葬・逆修・寿陵の項目から編集部作成)

逆修は、日本大百科全書によると、9世紀末に菅原道真が書いた願文が早い例とされます。平安時代の貴族の間で行われ、中世には民間にも広まりました。生前に戒名をつけ、墓石や位牌に朱で書いておく習わしも、ここから来ています。

現代の例では、女優で映画プロデューサーの水の江滝子さんの生前葬が事典に記されています。日本大百科全書によると、1993年、78歳の誕生日の前日に行いました。戒名を生前に授かる方法は戒名とはで説明しています。

生前葬を開く目的

開く理由は人それぞれです。たとえば、次のような目的があります。

  • 感謝を直接伝える:亡くなってからではなく、自分の口でお礼を言いたい。
  • 会えるうちに会う:病気や高齢で、会える機会が限られている。
  • 人生の区切りにする:仕事の引退や節目の年齢に合わせる。
  • 死後を簡素にする:亡くなったあとは家族だけで送ってほしいので、知人とのお別れを先に済ませる。

最後の目的で開くなら、亡くなったあとの葬儀をどうするかまで、家族と決めておくことが大切です。

生前葬の流れ(例)

決まった式次第はありません。宗教色のない会にする場合の一例です。

  1. 開会のことば:司会は家族や友人、または会場のスタッフに頼みます。
  2. 本人のあいさつ:生前葬を開いた理由を、短く伝えます。
  3. これまでの歩みの紹介:写真や映像、年表などで振り返ります。
  4. 友人・知人のことば:弔辞ではなく、感謝や思い出を語ってもらいます。
  5. 会食・歓談:本人がテーブルを回って話す時間をとります。
  6. 献花や記念撮影:花を手向けたり、全員で写真を撮ったりします。
  7. 本人からのお礼のことば
  8. 閉会

菩提寺がある人は、住職に読経などを頼み、仏事として営む方法もあります。その場合は内容を早めに相談します。

ポイント

生前葬では、本人が主役であり、主催者でもあります。体調に合わせて、無理のない時間と内容にしてください。座ったまま話せる席の配置や、途中で休める控室があると安心です。

招待状と会費の決め方

生前葬は招かれる側も慣れていないことが多いため、案内状に具体的に書いておくと戸惑わせません。

案内状に書くこと

  1. 生前葬であることと、開く理由
  2. 日時と会場
  3. 会費の有無と金額
  4. 服装(「平服でお越しください」など)
  5. 香典・お祝い・供花の扱い(受け取るか、辞退するか)
  6. 出欠の返事の期限と連絡先

会費制と招待制の違い

方式 招かれた人の負担 主催する側の注意
会費制 決まった会費だけ 会費以外は辞退と書くと迷わせない
招待制(本人が負担) なし 香典やお祝いの扱いを書いておく

香典は、デジタル大辞泉では「死者の霊前に供えて、香や花の代わりとする金品」と説明されています。生きている本人の会に「香典」を持っていくのは、招かれる人にとっても気をつかうところです。会費制にして「会費のほかはご辞退します」と書いておくと、招かれた人が迷わずに済みます。

招かれた側は、案内状に従います。書かれていないことは、主催者に尋ねてかまいません。

受け取るお金と税金

生前葬で受け取るお祝いや会費の扱いは、国税庁の説明が参考になります。

受け取るもの 誰から 税金の扱い
社会通念上相当なお祝い・見舞いなど 個人 贈与税はかからない
それを超える金額の金品 個人 贈与税の対象になることがある
金品 会社など法人 贈与税ではなく所得税の対象

(国税庁タックスアンサー No.4405「贈与税がかからない場合」から編集部作成)

贈与税は、1年間に受けた贈与の合計から基礎控除110万円を差し引いて計算します(国税庁 No.4408)。何が「社会通念上相当」かは、贈った人との関係などで判断されます。金額が大きいときは、税務署か税理士に確かめてください。

亡くなったあとに別に必要なこと

生前葬は法律上の手続きとは関係がありません。亡くなったあとは、次のことが必要です。

必要なこと いつまで・決まり 根拠
死亡届を出す 死亡を知った日から7日以内 戸籍法86条
火葬の許可を受ける 死亡届を受けた市町村長が許可 墓地埋葬法5条
火葬する 死亡から24時間たってから 墓地埋葬法3条
納骨する 墓地・納骨堂に許可証を出す 墓地埋葬法14条

(e-Gov法令検索の条文から編集部作成)

通夜や告別式を行うかどうかは自由です。生前葬を済ませた人では、亡くなったあとは家族だけで見送る、という形も考えられます。死亡届の出し方は死亡届の出し方、国民健康保険などの葬祭費は葬祭費・埋葬料の申請で説明しています。

注意

生前葬に出席した人は、本人が亡くなったことを知らないままになりがちです。亡くなったときに誰へ知らせるか、連絡先の一覧を残しておくと、家族が困りません。

開く前に家族と話しておくこと

  1. 亡くなったあとの葬儀の形:通夜・告別式をするか、家族だけで送るか、直葬にするか。
  2. 菩提寺との関係:先祖のお墓がお寺にあれば、亡くなったあとの葬儀や戒名、納骨をどうするか相談します。全日本冠婚葬祭互助協会は、菩提寺以外で戒名をつけると、納骨のときに菩提寺から断られることもあると注意しています。
  3. 知らせる人の範囲:生前葬の出席者名簿を、亡くなったときの連絡先として残します。
  4. 費用の分担:生前葬の費用を誰が払うか、会費で足りない分をどうするか。
  5. 書き残す:希望はエンディングノートや遺言などに書き、家族と共有します。

希望の書き残し方はエンディングノートの書き方、終活の全体は終活とはをご覧ください。宗教色のない葬儀の進め方は無宗教葬(自由葬)、身内だけで先に送る形は密葬とはで説明しています。

よくある質問

生前葬をすれば、亡くなったあとの葬儀はしなくてよいですか?

葬儀・告別式を行う法律上の義務はありません。ただ、死亡届の提出(知った日から7日以内)、市町村長の火葬許可、火葬は必ず必要です。亡くなったあとをどうしてほしいか、家族と話し、エンディングノートなどに書いておくと安心です。

生前葬に招かれたら、香典は持っていきますか?

案内状に従います。香典はもともと亡くなった人の霊前に供える金品なので、生前葬は会費制にして香典を受け取らない形にすることもあります。案内に書かれていなければ、主催者に尋ねてかまいません。

生前葬の服装は喪服ですか?

決まりはありません。生前葬は本人が主催する会なので、案内状に服装が書かれていれば、それに従います。「平服で」とあれば、落ち着いた色のスーツやワンピースなどで出席します。

生前葬で受け取ったお祝いに税金はかかりますか?

国税庁は、個人から受ける祝物や見舞いなどの金品で、社会通念上相当と認められるものには贈与税がかからないとしています。会社など法人から受け取ったものは、贈与税ではなく所得税の対象です。金額が大きいときは税務署に確かめてください。

仏教では、生きているうちの仏事はできますか?

生前に自分の死後の冥福を祈って仏事を行うことを「逆修(ぎゃくしゅ)」といい、平安時代から行われてきたとされます。生前に戒名を授かることもできます。菩提寺がある場合は、まず住職に相談してください。

出典・参考にした資料

  1. 生前葬(デジタル大辞泉)コトバンク(小学館)(2026-10-08 確認)
  2. 逆修(デジタル大辞泉・日本大百科全書・世界大百科事典ほか)コトバンク(2026-10-08 確認)
  3. 寿陵(デジタル大辞泉)コトバンク(小学館)(2026-10-08 確認)
  4. 香典(デジタル大辞泉・日本大百科全書)コトバンク(小学館)(2026-10-08 確認)
  5. 水の江滝子(日本大百科全書・20世紀日本人名事典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  6. No.4405 贈与税がかからない場合国税庁(2026-10-08 確認)
  7. No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)国税庁(2026-10-08 確認)
  8. 戸籍法(第86条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
  9. 墓地、埋葬等に関する法律(第3条・第5条・第14条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
  10. お葬式のマナー:菩提寺(檀那寺)に早めに連絡一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)

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