手続きとお金

亡くなった人の銀行口座の凍結と引き出し方 払い戻し制度の上限と必要書類

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • 金融機関に死亡を伝えると、その口座の入出金や引き落としは原則として止まります。
  • 遺産分割の前でも、預金額×3分の1×法定相続分を、1金融機関150万円まで単独で引き出せます。
  • 全額の払い戻しは、遺言書や遺産分割協議書、戸籍、印鑑証明書をそろえて手続きします。
目次
  1. 口座が止まるのは「金融機関に伝えたとき」
  2. お金を受け取る3つの方法
  3. 遺産分割前の払い戻し制度(2019年7月から)
  4. 家庭裁判所の仮分割
  5. 正式な相続手続き(解約・名義変更)
  6. ゆうちょ銀行の手続き
  7. 古い通帳が見つかったとき
  8. 公共料金などの引き落としを切り替える
  9. 迷ったときの相談先

口座の名義人が亡くなったことを金融機関に伝えると、その口座の入出金は原則として止まります。全国銀行協会が案内している扱いです。止まった預金は、遺産分割が終わるまで、相続人1人の判断では引き出せないのが基本です。ただし、葬儀代などのために、遺産分割の前でも相続人が1人で払い戻せる制度があります。額は「亡くなった時の預金額×3分の1×法定相続分」で、1つの金融機関につき150万円までです。全額を受け取るには、遺言書や遺産分割協議書、戸籍などをそろえて相続の手続きをします。

口座が止まるのは「金融機関に伝えたとき」

全国銀行協会は、相続の連絡と同時に、亡くなった人の口座での取引(預金の入出金など)が原則として制限されると案内しています。

  • 止まるのは、窓口やATMでの引き出しだけではありません。口座への振り込みや、公共料金などの自動引き落としも止まります。
  • 家族が金融機関に伝える前でも、亡くなった人の預金は相続人全員のものです。

注意

暗証番号を知っていても、亡くなったあとにキャッシュカードで引き出すのは避けます。大阪家庭裁判所は、亡くなる前後に一部の相続人が引き出した預金は、原則として遺産分割の調停で扱えないと説明しています。相続人全員の合意がなければ、別に民事訴訟で争うことになります。また、相続財産を処分すると、相続放棄ができなくなることがあります(民法第921条)。

地方銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協(JA)や漁協、ゆうちょ銀行の口座も、同じ考え方です。民法第909条の2の払い戻し制度は「預貯金」が対象で、銀行の預金も、ゆうちょやJAの貯金も含まれます。

お金を受け取る3つの方法

口座が止まったあとに預金を受け取る方法は、次の3つです。

方法 使える場面 受け取れる額 家庭裁判所
遺産分割前の払い戻し制度 葬儀代や生活費などで急ぐとき 計算式の額。1金融機関150万円まで 不要
家庭裁判所の仮分割 遺産分割の調停・審判を申し立てているとき 裁判所が認めた額 必要
正式な相続手続き 遺言書や遺産分割協議書があるとき 全額(取り分に応じて) 不要

遺産分割前の払い戻し制度(2019年7月から)

2019年7月1日に施行された民法第909条の2の制度です。全国銀行協会は、当面の生活費や葬儀費用の支払いなどにあてられるよう設けられたと説明しています。

1人で払い戻せる額

計算式は次のとおりです。

亡くなった時の預金額 × 3分の1 × 払い戻す人の法定相続分

  • 口座ごとに計算します。定期預金は明細ごとです。
  • 同じ金融機関から払い戻せるのは、合わせて150万円までです(法務省令)。同じ金融機関に複数の支店の口座があっても、全支店で150万円です。
  • 別の金融機関の口座は、それぞれ150万円まで払い戻せます。
  • 基準は亡くなった時の残高です。今の残高ではありません。

早見表:1つの口座から払い戻せる額

亡くなった時の預金額と、払い戻す人の法定相続分ごとに計算しました。150万円を超える分は、上限で止まります。

亡くなった時の預金額 配偶者(2分の1) 子2人のうち1人(4分の1) 子1人だけ(すべて)
300万円 50万円 25万円 100万円
600万円 100万円 50万円 150万円(上限)
900万円 150万円 75万円 150万円(上限)
1,200万円 150万円(上限) 100万円 150万円(上限)
1,800万円 150万円(上限) 150万円 150万円(上限)

たとえば、相続人が配偶者と子2人で、A銀行に600万円、B信用金庫に300万円あった場合です。配偶者はA銀行から100万円、B信用金庫から50万円、合わせて150万円を払い戻せます。

法定相続分の割合は、相続人は誰になる?範囲と順位・法定相続分の早見表で確かめられます。

必要な書類

全国銀行協会によると、おおむね次の書類が必要です。

  1. 亡くなった人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  2. 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  3. 払い戻しを受ける人の印鑑証明書
  4. 払い戻しを受ける人の本人確認書類

金融機関によって、必要な書類が違うことがあります。書類を出してから払い戻しまでには、確認のため一定の時間がかかります。葬儀代の支払いに間に合わせたいときは、早めに金融機関に相談します。

知っておきたい注意点

  • 払い戻した分は、遺産の一部を分けて受け取ったものとみなされます(民法第909条の2)。後の遺産分割で、その人の取り分から差し引いて調整します。
  • 遺言で預金の行き先が決まっている場合などは、この制度を使えないことがあります。
  • 相続人が1人で手続きできますが、他の相続人に伝えておくと、後の話し合いがこじれにくくなります。

注意

相続放棄を考えている人は、この制度を使う前に家庭裁判所や弁護士・司法書士に相談してください。払い戻しは遺産の一部を取得したものとみなされるため、放棄ができなくなるおそれがあります。くわしくは相続放棄の期限と手続きをご覧ください。

家庭裁判所の仮分割

150万円では足りないときなどに使える、もう1つの方法です。家事事件手続法第200条3項にもとづきます。

  • 遺産分割の調停か審判を、家庭裁判所に申し立てていることが前提です。
  • 借金の返済や生活費などで、預金を使う必要があると認められる必要があります。
  • 他の相続人の利益を害する場合は、認められません。
  • 認められると、特定の預金の全部または一部を仮に取得し、金融機関から1人で払い戻せます。全国銀行協会によると、手続きには家庭裁判所の審判書の謄本(確定の表示がなければ確定証明書も)と、払い戻す人の印鑑証明書が要ります。

調停の進め方は遺産分割の流れと協議書にまとめています。

正式な相続手続き(解約・名義変更)

預金をすべて受け取るには、相続の手続きをします。全国銀行協会が示す流れは次の4段階です。

  1. 金融機関に連絡する。相続の状況に応じて、具体的な手続きの案内があります。
  2. 必要書類をそろえる。遺言書の有無などで変わります(下の表)。
  3. 書類を出す。金融機関所定の相続手続きの書類に記入し、相続人が署名・押印して出します。
  4. 払い戻しを受ける。手続きに日数がかかることがあります。

ケース別の必要書類

全国銀行協会が示す、おおむねの書類です。

ケース 主な書類
遺言書がある 遺言書、検認済証明書など(公正証書遺言は不要)、亡くなった人の死亡が分かる戸籍、預金を受け取る人(遺言執行者がいればその人)の印鑑証明書
遺言書がなく、遺産分割協議書がある 協議書(相続人全員の署名・押印)、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書
遺言書も協議書もない 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書
家庭裁判所の調停・審判がある 調停調書か審判書の謄本(審判は確定証明書も)、預金を受け取る人の印鑑証明書
  • 遺言書も協議書もないときは、全国銀行協会の例でも、相続人全員の印鑑証明書が必要とされています。
  • 戸籍の束の代わりに、法務局の「法定相続情報一覧図の写し」を使える場合があります。口座が複数の金融機関にあるときは、先に一覧図を作ると便利です。
  • 遺言書の検認、協議書の作り方は遺産分割の流れと協議書をご覧ください。

ゆうちょ銀行の手続き

ゆうちょ銀行は、独自の流れを案内しています。

  1. 申し出る。ゆうちょ銀行か郵便局の貯金窓口、または相続コールセンターに連絡します。
  2. 「相続確認表」を書く。遺言書の有無、亡くなった人とすべての相続人の情報、口座の情報を書きます。
  3. 相続確認表を出す。貯金窓口のほか、ゆうちょ手続きアプリでも手続きできます。
  4. 必要書類をそろえる。窓口に出した場合は、約1〜2週間で、専門部署(貯金事務センター)から「必要書類のご案内」が郵送されます。「相続Web案内サービス」を使うと、必要書類をWebで確かめられます。
  5. 書類を出す。
  6. 払い戻しを受け取る。ゆうちょ銀行によると、貯金払戻証書やゆうちょの口座への入金なら約1〜2週間、他の金融機関の口座への振り込みなら約3〜4週間が目安です。

補足

2007年9月30日以前(郵政民営化の前)に預けた定額郵便貯金などは、旧郵便貯金法のルールが続いています。ゆうちょ銀行によると、満期などから20年間取り扱いがないと催告書が送られ、そこから2か月で払い戻しがなければ、権利が消えます。遺品から古い貯金証書が見つかったら、早めに郵便局の貯金窓口に相談してください。

古い通帳が見つかったとき

長く使われていない口座でも、あきらめる必要はありません。

  • 金融庁によると、2009年1月以降に最後の取引があり、10年以上動きのない預金は「休眠預金」として民間の公益活動に使われます。
  • それでも、取引のあった金融機関で引き出せます。期限はありません。
  • 名義人が亡くなっている場合は、相続人が金融機関所定の手続きで引き出せます。

通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物、スマートフォンのアプリやメールが、口座を見つける手がかりになります。

公共料金などの引き落としを切り替える

口座が止まると、その口座からの引き落としもできなくなります。料金の未払いを防ぐため、早めに切り替えます。

  1. 引き落としの一覧を作る。通帳の記録やクレジットカードの明細を見て、何がどこから引き落とされていたか書き出します。
  2. 契約先に連絡する。亡くなったことを伝え、名義の変更と支払い方法の変更、または解約を申し出ます。
  3. 新しい支払い方法を決める。家族の口座振替やクレジットカード、払込票などに切り替えます。
契約 連絡先 すること
電気・ガス 契約している電力会社・ガス会社 名義と支払い方法の変更、または解約
水道 市区町村の水道局など(名前は自治体で違う) 同上
固定電話・携帯電話・インターネット 契約している通信会社 名義の変更か解約
家賃・保険料・クレジットカード 大家や管理会社、保険会社、カード会社 契約の扱いと未払い分の確認

水道は、多くの地域で市区町村などが運営しています。お住まいの地域の窓口は「(市区町村名) 水道 名義変更 死亡」と検索すると見つかります。

ポイント

年金が振り込まれていた口座の場合、日本年金機構は、口座を解約していないと未支給年金が入金される場合があると案内しています。年金の手続きは年金をもらっていた人が亡くなったらをご覧ください。

亡くなった人のクレジットカードの未払い分や、引き落とせなかった料金は、借金と同じく相続人が受け継ぎます(民法第896条)。借金が多いときは、相続放棄の期限(3か月)も意識してください。

迷ったときの相談先

内容 相談先
払い戻しの手続き、必要書類 口座のある金融機関
家庭裁判所の仮分割、相続放棄 家庭裁判所
引き出しをめぐる相続人どうしのもめごと 弁護士、法テラス
相続税の計算で預金をどう扱うか 税務署、税理士

亡くなった後の手続きの全体と期限は死亡後の手続き一覧と期限に、期限の日付を出せる手続きチェックリストもあります。葬儀費用の目安は葬儀費用の相場と内訳をご覧ください。

よくある質問

死亡届を出すと、銀行口座は自動で凍結されますか?

全国銀行協会の案内では、口座の取引が止まるのは、相続の連絡を金融機関にしたときです。凍結されるまでの間も、亡くなった人の預金は相続人全員のものになるため、一部の家族が勝手に引き出すと、後で争いのもとになります。相続放棄を考えている場合は、手をつけないでください。

凍結された口座から、葬儀代を引き出せますか?

遺産分割の前でも、相続人は1人で「亡くなった時の預金額×3分の1×自分の法定相続分」を払い戻せます。上限は1つの金融機関につき150万円です。払い戻した分は、後の遺産分割で、その人が受け取ったものとして調整されます。

払い戻し制度に必要な書類は何ですか?

全国銀行協会によると、おおむね、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、払い戻しを受ける人の印鑑証明書と本人確認書類です。金融機関によって違うことがあるので、事前に問い合わせてください。

口座の凍結を解除するには、どうすればいいですか?

凍結そのものを解くのではなく、相続の手続きをして払い戻しや名義変更を受けます。遺言書があれば遺言書と検認済証明書など、なければ遺産分割協議書と相続人全員の戸籍・印鑑証明書などを金融機関に出します。

公共料金の引き落とし口座が亡くなった人の口座でした。どうなりますか?

口座が止まると、引き落としもできなくなります。通帳の引き落としの記録を見て、電気・ガス・水道・電話などの契約先に連絡し、名義と支払い方法の変更か解約を申し出ます。

出典・参考にした資料

  1. 民法(第466条の5・第896条・第909条の2・第921条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
  2. 民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
  3. 家事事件手続法(第200条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
  4. 預金相続の手続の流れ全国銀行協会(2026-10-08 確認)
  5. 預金相続の手続に必要な書類全国銀行協会(2026-10-08 確認)
  6. ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度全国銀行協会(2026-10-08 確認)
  7. ゆうちょの相続手続きゆうちょ銀行(2026-10-08 確認)
  8. 相続の手続きを行う際に必要となる書類は何ですか。ゆうちょ銀行(2026-10-08 確認)
  9. 民営化前の定額郵便貯金等の権利消滅の取扱いゆうちょ銀行(2026-10-08 確認)
  10. 長い間、お取引のない預金等はありませんか?金融庁(2026-10-08 確認)
  11. 遺産分割調停の手続について大阪家庭裁判所(2026-10-08 確認)
  12. 年金を受けている方が亡くなったとき日本年金機構(2026-10-07 確認)

制度や料金は変わることがあります。編集方針/誤りに気づいたらお知らせください。

あわせて読みたい

手続きとお金の記事

手続きとお金をすべて見る