手続きとお金

相続放棄の期限は3か月 家庭裁判所での手続き・費用とやってはいけないこと

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • 相続放棄は、自分が相続人になったと知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
  • 費用は1人につき収入印紙800円と郵便切手。決められないときは期間の伸長を申し立てます。
  • 遺産を処分すると放棄できなくなることがあります。放棄すると次の順位の人が相続人に。
目次
  1. 相続の3つの選び方
  2. 期限は「知った時から3か月」
  3. 相続放棄の手続きの流れ
  4. 必要書類と費用
  5. 放棄すると、次の順位の人が相続人になる
  6. やってはいけないこと:単純承認とみなされる行為
  7. 葬儀費用を遺産から払ってもいい?
  8. 放棄しても受け取れることがあるお金
  9. 放棄したあとの管理義務(2023年4月から)
  10. 3か月で決めるための相談先

相続放棄は、亡くなった人の財産も借金も、いっさい受け継がない手続きです。自分が相続人になったと知った時から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申述します(民法第915条・第938条)。費用は、申述する人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。3か月で決められないときは、期間を延ばす申立てができます。期限内でも、遺産を処分すると放棄できなくなることがあるので注意が必要です。

相続の3つの選び方

相続人は、次の3つのどれかを選びます。

選び方 受け継ぐもの 手続き
単純承認 財産も借金もすべて 不要(3か月が過ぎると単純承認とみなされる)
相続放棄 何も受け継がない 1人ずつ家庭裁判所に申述
限定承認 受け継いだ財産の範囲で借金を返す 相続人全員で家庭裁判所に申述

限定承認は、借金がどれだけあるか分からず、財産が残るかもしれないときの方法です。相続人全員が共同でしかできず(民法第923条)、財産の目録も作ります。この記事では、相続放棄を中心に説明します。

期限は「知った時から3か月」

民法第915条1項は、期限を次のように定めています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

いつから数えるか

裁判所の説明では、3か月は「亡くなったこと」と「それによって自分が法律上の相続人になったこと」を知った時から数えます。

  • 配偶者や子は、ふつうは亡くなったことを知った日からです。
  • 先の順位の人が放棄したことで相続人になった人は、そのことを知った時から数えることになります。
  • 相続人が未成年者などの場合は、親などの法定代理人が知った時から数えます(民法第917条)。

例外もあります。財産がまったくないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合などです。裁判所は、財産があると知った時から3か月以内なら受理されることもあるとしています。ただし、例外として扱われるものなので、早めに動くのが基本です。

何もしないで3か月が過ぎると

期限内に相続放棄も限定承認もしなかった場合は、単純承認をしたとみなされます(民法第921条2号)。借金も含めて受け継ぐことになります。

3か月で決められないときは「期間の伸長」

財産を調べても、放棄するかどうか決められないときは、家庭裁判所に期間を延ばしてもらうよう申し立てられます。

  • 申し立てる人:相続人などの利害関係人
  • 申立先:亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 費用:収入印紙800円分(相続人1人につき)と郵便切手
  • 期限:知った時から3か月以内に申し立てる必要があります

注意

相続放棄は、3か月の期間内であっても撤回できません(民法第919条)。財産と借金をよく調べてから申述します。

相続放棄の手続きの流れ

  1. 財産と借金を調べる。通帳、郵便物、請求書や督促状、固定資産税の通知などを確かめます。相続人は、決める前に財産を調べることができます(民法第915条2項)。
  2. 書類を集める。戸籍謄本など、放棄する人と亡くなった人の関係を示す書類をそろえます(下の一覧)。
  3. 申述書を書く。裁判所のホームページに、成人用と未成年者用の書式と記載例があります。
  4. 家庭裁判所に出す。亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所です。郵送での提出先を案内している家庭裁判所もあります。
  5. 裁判所からの問い合わせに答える。審理に必要な場合は、追加の書類を求められたり、事情を聞かれたりします。
  6. 受理の通知を受け取る。必要なら「相続放棄申述受理証明書」を申請します。受理した家庭裁判所に、申請書と収入印紙150円分を出します。

受理されたあとは、亡くなった人の財産を管理していれば、次の相続人に引き継ぎます。裁判所は、債権者から請求を受けている場合は、受理されたことを債権者に連絡するとよいとしています。

必要書類と費用

費用

  • 収入印紙800円分(申述する人1人につき)
  • 連絡用の郵便切手(裁判所ごとに違います。水戸家庭裁判所の場合は110円切手5枚の550円分)
  • 戸籍謄本などを取る費用

書類

すべての人に必要なのは、相続放棄の申述書、亡くなった人の住民票の除票(または戸籍の附票)、放棄する人の戸籍謄本です。このほか、亡くなった人との関係に応じて戸籍が要ります。

放棄する人 追加で必要な主な戸籍
配偶者 亡くなった人の死亡が書かれた戸籍
子・孫(第1順位) 亡くなった人の死亡が書かれた戸籍。孫の場合は、本来の相続人(親)の死亡が書かれた戸籍も
父母・祖父母(第2順位) 亡くなった人の出生から死亡までのすべての戸籍。亡くなった子がいれば、その子の出生から死亡までの戸籍など
兄弟姉妹・おい・めい(第3順位) 亡くなった人の出生から死亡までのすべての戸籍。父母などの死亡が書かれた戸籍など
  • 同じ書類は1通で足ります。先の順位の人の手続きで出していれば、出し直す必要はありません。
  • 申述までに取れない戸籍は、あとから追加で出すこともできます。
  • 戸籍の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を出せる場合があります。申述する家庭裁判所に確認してください。
  • 水戸家庭裁判所は、債権者から届いた通知書や督促状のコピーも出すよう案内しています。

補足

2024年3月から、本籍地以外の市区町村でも戸籍をまとめて請求できるようになりました(戸籍の広域交付)。ただし対象は、本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍です。兄弟姉妹の戸籍は含まれていないため、兄弟姉妹が放棄する場合は、本籍地の市区町村に請求します。

放棄すると、次の順位の人が相続人になる

相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。そのため、次の順位の人が相続人になります。

順位 相続人
いつも 配偶者
第1順位 子(子が先に亡くなっていれば孫)
第2順位 父母(父母が亡くなっていれば祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(先に亡くなっていればおい・めい)

子が全員放棄すると、父母や祖父母が相続人になります。その人たちもいないか放棄すると、兄弟姉妹に移ります。放棄した人の子(孫)が代わりに相続人になることはありません。民法第887条が定める代わりの相続(代襲相続)は、死亡などの場合に限られているためです。

次の順位の人にも、知った時から3か月の期限があります。借金のために放棄するなら、次の順位の人にも伝えておくと、相手が期限内に判断しやすくなります。

相続人が誰もいなくなった場合は、家庭裁判所が選ぶ「相続財産清算人」が財産を清算します(民法第951条・第952条)。

やってはいけないこと:単純承認とみなされる行為

民法第921条は、次の場合に単純承認をしたものとみなすと定めています(一部)。

一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。

つまり、遺産を処分すると放棄できなくなることがあります。放棄したあとでも、遺産を隠したり使ったりすると、放棄の効果を失うことがあります。

注意

放棄を考えている間は、次のことを避けます。

  • 亡くなった人の預貯金を引き出して、自分の生活費などに使う
  • 不動産や車、株などを売る、人にあげる、名義を変える
  • 価値のある遺品を持ち帰って使う、売る
  • 預貯金の仮払い制度を使う(払い戻した分は、遺産の一部を取得したものとみなされます。民法第909条の2)
  • 放棄したあとに、遺産を隠したり使ったりする

一方で、財産の価値を保つための「保存行為」は、処分にあたらないとされています(民法第921条1号ただし書)。放棄するかどうか決めるまでの間は、自分の財産と同じ注意で遺産を管理します(民法第918条)。

葬儀費用を遺産から払ってもいい?

葬儀費用を遺産から払うことが「処分」にあたるかどうかは、法律に直接の定めがありません。金額や支払い方など、個別の事情で判断されることになります。

放棄を考えているなら、次のように進めるのが安全です。

  1. 遺産に手をつける前に、弁護士や司法書士、家庭裁判所の手続案内に相談する
  2. 葬儀費用は、喪主や家族のお金でいったん支払う
  3. 見積書と領収書を保管しておく

葬儀費用の内訳や相場は葬儀費用の相場と内訳にまとめています。

放棄しても受け取れることがあるお金

次のお金は、相続財産とは別の、遺族自身の権利として扱われるものです。

  • 未支給年金:まだ受け取っていない年金を、生計を同じくしていた遺族が「自己の名で」請求します(国民年金法第19条)。国税庁は、最高裁判決を引いて、遺族の固有の権利で相続財産ではないとしています。
  • 遺族年金:法律にもとづいて、条件を満たす遺族に直接支給されます(国民年金法第37条など)。
  • 受取人が指定された死亡保険金:受取人が保険会社に請求します。国税庁は、相続を放棄した人が受け取った死亡保険金には、非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使えないとしています。

補足

受け取れるかどうかは、契約の内容や個別の事情で変わります。保険会社や年金事務所、専門家に確認してください。年金の手続きは年金をもらっていた人が亡くなったらにまとめています。

放棄したあとの管理義務(2023年4月から)

2023年4月1日に施行された民法の改正で、放棄した人の義務がはっきりしました。民法第940条1項は次のとおりです。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

法務省によると、改正前は、放棄した人がいつまで、どこまで管理を続けるのかがはっきりせず、重い負担を強いられる例がありました。

  • 義務があるのは:放棄した時に、その財産を実際に占有している場合です。たとえば、亡くなった親の家に住んでいた子が放棄した場合などです。
  • いつまで:次の相続人か、相続財産清算人に引き渡すまでです。
  • どの程度:自分の財産と同じ程度の注意で保存します。

3か月で決めるための相談先

相談したいこと 相談先
申述書の書き方、必要な書類 亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所
放棄すべきか、借金の整理 弁護士、法テラス
書類の作成、不動産の登記 司法書士
相続税がかかるか 税理士、税務署

放棄すべきかどうかは、財産と借金の状況や家族の事情で変わります。迷ったら、3か月の期限が来る前に専門家に相談するか、期間の伸長を申し立ててください。ほかの手続きの期限は死亡後の手続き一覧と期限にまとめています。

よくある質問

相続放棄の期限の3か月は、いつから数えますか?

亡くなったことと、それによって自分が相続人になったことを知った時から3か月です(民法第915条)。配偶者や子なら、ふつうは亡くなったことを知った日からです。先の順位の人が放棄したことで相続人になった人は、そのことを知った時から数えることになります。

相続放棄にかかる費用はいくらですか?

家庭裁判所に納めるのは、申述する人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。郵便切手の額は裁判所ごとに違い、たとえば水戸家庭裁判所は550円分と案内しています。このほか戸籍謄本などを取る費用がかかり、弁護士や司法書士に頼む場合は別に報酬がかかります。

葬儀費用を亡くなった人の預金から払うと、相続放棄できなくなりますか?

葬儀費用の支払いが、単純承認とみなされる「処分」にあたるかどうかは、法律に直接の定めがなく、金額や事情によって判断されます。放棄を考えている場合は、遺産から支払う前に、弁護士や司法書士、家庭裁判所の手続案内に相談するのが安全です。喪主や家族が立て替え、領収書を保管しておく方法もあります。

相続放棄すると、亡くなった人の借金は誰が払うのですか?

放棄した人は初めから相続人でなかったことになり、次の順位の人が相続人になります。子が全員放棄すると父母(亡くなっていれば祖父母)、その人たちもいないか放棄すると兄弟姉妹に移ります。相続人が誰もいなくなった場合は、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が財産を清算します。

相続放棄をしても、遺族年金や死亡保険金は受け取れますか?

遺族年金や未支給年金は、法律にもとづいて遺族が自分の権利として受け取るものです。国税庁は、未支給年金は遺族の固有の権利で相続財産ではないとしています。受取人が指定された死亡保険金は、受取人が保険会社に請求するものですが、契約内容によるため保険会社に確認してください。

出典・参考にした資料

  1. 民法(第887条〜第890条・第909条の2・第915条〜第924条・第938条〜第940条・第951条・第952条)e-Gov法令検索(2026-10-07 確認)
  2. 相続の放棄の申述裁判所(2026-10-07 確認)
  3. 相続の承認又は放棄の期間の伸長裁判所(2026-10-07 確認)
  4. 裁判手続 家事事件Q&A裁判所(2026-10-07 確認)
  5. 相続放棄ガイダンス水戸家庭裁判所(2026-10-07 確認)
  6. 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント法務省(2026-10-07 確認)
  7. 戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)法務省(2026-10-07 確認)
  8. 死亡した者に係る未支給の国民年金(質疑応答事例)国税庁(2026-10-07 確認)
  9. No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金国税庁(2026-10-07 確認)
  10. 国民年金法(第19条・第37条)e-Gov法令検索(2026-10-07 確認)

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