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相続税はかかる? 基礎控除の計算と申告期限10か月、葬式費用の控除

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • 相続税がかかるのは、正味の遺産額が3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えるとき。
  • 2024年に亡くなった人で相続税がかかったのは10.4%。申告と納付は10か月以内です。
  • 通夜・葬儀・火葬・お布施などの葬式費用は遺産から差し引けます。法事の費用は対象外。
目次
  1. 基礎控除の計算
  2. 正味の遺産額の出し方
  3. 相続税がかかる人の割合
  4. 葬式費用は遺産から差し引ける
  5. 生命保険金と死亡退職金の非課税枠
  6. 配偶者の税額の軽減
  7. 税額の計算の流れ
  8. 申告と納付の期限
  9. 税理士に相談する目安

相続税がかかるのは、遺産から借金や葬式費用を差し引いた「正味の遺産額」が、基礎控除を超える場合だけです。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、相続人が配偶者と子2人なら4,800万円です。国税庁によると、2024年(令和6年分)に亡くなった人のうち、相続税がかかったのは10.4%でした。かかる場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納付をします。通夜や葬儀、火葬などの葬式費用は、遺産から差し引けます。

基礎控除の計算

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(相続税法第15条)。

法定相続人の数 基礎控除額 例
1人 3,600万円 子1人
2人 4,200万円 配偶者と子1人
3人 4,800万円 配偶者と子2人
4人 5,400万円 配偶者と子3人

正味の遺産額がこの額以下なら、相続税の申告も納税も要りません(国税庁タックスアンサーNo.4205)。この判定は、小規模宅地等の特例などを使う前の額で行います。

法定相続人の数え方

  • 配偶者は、いつも相続人です(民法第890条)。
  • 子がいれば子、いなければ父母、父母もいなければ兄弟姉妹が相続人になります(民法第887条・第889条)。
  • 相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます。
  • 養子は、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までを数に入れます。

正味の遺産額の出し方

国税庁の説明をもとにすると、正味の遺産額は次のように出します。

  1. 遺産総額:預貯金、土地・建物、株などの合計
  2. 足すもの:死亡保険金や死亡退職金のうち非課税枠を超える分、相続時精算課税で贈与を受けた財産
  3. 引くもの:お墓や仏壇などの非課税財産、借金などの債務、葬式費用
  4. 足すもの:亡くなる前の一定期間に受けた贈与(2026年中に亡くなった場合は3年以内)

墓地や墓石、仏壇、仏具など、日ごろ礼拝に使っている物には相続税がかかりません(相続税法第12条)。ただし、骨とう品として価値があるものなどは対象になります。

相続税がかかる人の割合

国税庁が2025年12月に公表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」の数字です。

項目 令和6年分
亡くなった人 1,605,378人
うち相続税の税額があった人 166,730人
課税割合 10.4%(前年は9.9%)
1人あたりの課税価格 1億4,025万円(相続税がかかった場合)

このほか、申告はしたものの税額がなかった人が39,755人いました。

相続税がかかった人の財産の内訳を同じ資料から計算すると、現金・預貯金等が約35%、土地が約30%でした。土地や建物があると、預貯金が少なくても基礎控除を超えることがあります。

葬式費用は遺産から差し引ける

相続税を計算するときは、相続人が負担した葬式費用を遺産総額から差し引けます(相続税法第13条)。国税庁のタックスアンサーNo.4129と、相続税法基本通達13−4・13−5による範囲は次のとおりです。

差し引けるもの 差し引けないもの
通夜や告別式など、葬式の前後に通常かかる費用 香典返しの費用
火葬・埋葬・納骨の費用 墓石や墓地の購入費、墓地を借りる費用
遺体や遺骨の搬送費 初七日や四十九日など、法事の費用
お寺などへの読経料などのお礼(お布施) 医学上・裁判上の特別な処置の費用
死体の捜索や運搬の費用
  • 仮葬式と本葬式を行った場合は、両方の費用を差し引けます。
  • 差し引けるのは、実際に費用を負担した相続人などです。
  • 相続を放棄した人でも、実際に葬式費用を負担した場合は、差し引ける場合があります。遺贈(遺言による贈与など)で取得した財産から差し引いて差し支えないとされています(相続税法基本通達13−1)。

ポイント

葬儀社の見積書と領収書は捨てずに保管します。お布施など領収書が出ない支払いは、日付、支払った相手、金額を記録しておくと申告のときに役立ちます。

葬儀全体の費用の目安は葬儀費用の相場と内訳、健康保険から出る葬祭費・埋葬料は葬祭費と埋葬料の申請方法をご覧ください。

生命保険金と死亡退職金の非課税枠

亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続で取得したものとみなされ、相続税の対象になります。ただし、受取人が相続人の場合は、次の額までは相続税がかかりません(相続税法第12条)。

500万円×法定相続人の数

たとえば法定相続人が3人なら、1,500万円までが非課税です。

  • 相続を放棄した人や、相続人以外の人が受け取った保険金には、この非課税枠を使えません。
  • 法定相続人の数は、放棄がなかったものとして数えます。

相続人が受け取る死亡退職金にも、同じく「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

配偶者の税額の軽減

配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、次のどちらか多い額までなら、配偶者に相続税はかかりません(相続税法第19条の2)。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分にあたる額

注意

この軽減は、申告書を出さないと使えません。税額がゼロになる場合も申告が必要です。また、申告期限までに分けられていない遺産は対象外です。「申告期限後3年以内の分割見込書」を出し、3年以内に分ければ対象になります。

税額の計算の流れ

相続税は、次の順に計算します(国税庁タックスアンサーNo.4152)。

  1. 正味の遺産額から基礎控除を引き、「課税遺産総額」を出す
  2. 課税遺産総額を、法定相続分どおりに分けたと仮定して、1人ずつの額を出す
  3. 1人ずつの額に税率をかけて合計し、「相続税の総額」を出す
  4. 相続税の総額を、実際に取得した割合で各人に割り振る
  5. 配偶者の税額の軽減などを差し引く

税率は、取得した額を区切りごとに分けてかけます(相続税法第16条)。

取得した額の区切り 税率
1,000万円以下の部分 10%
3,000万円以下の部分 15%
5,000万円以下の部分 20%
1億円以下の部分 30%
2億円以下の部分 40%
3億円以下の部分 45%
6億円以下の部分 50%
6億円を超える部分 55%

計算の例

正味の遺産額が1億円、相続人が配偶者と子2人で、法定相続分どおりに分けた場合の仮の例です。

  1. 課税遺産総額:1億円−4,800万円=5,200万円
  2. 法定相続分で分ける:配偶者2,600万円、子は1人1,300万円
  3. 税率をかける:配偶者340万円、子は1人145万円。合計630万円が相続税の総額
  4. 実際の取得割合で割り振る:配偶者315万円、子は1人157.5万円
  5. 配偶者は税額の軽減で0円。納める税額は子2人の合計315万円

配偶者2,600万円の計算は、1,000万円×10%+1,600万円×15%=340万円です。

実際には、各種の特例や税額控除で、税額は大きく変わります。たとえば小規模宅地等の特例を使うと、自宅の土地の評価を330㎡まで80%減らせる場合があります。この例は計算のしくみを示すためのもので、実際の税額は税務署や税理士に確認してください。

申告と納付の期限

  • 期限:亡くなったことを知った日(ふつうは亡くなった日)の翌日から10か月以内です(相続税法第27条)。国税庁の例では、1月6日に亡くなった場合は11月6日が期限です。期限が土日・祝日なら、翌日が期限になります。
  • 提出先:亡くなった人の住所地を担当する税務署です。相続人の住所地の税務署ではありません。
  • 納付:申告と同じ期限までに納めます。お金で一度に納めるのが原則で、分けて納める延納や、財産で納める物納の制度もあります。
  • 遅れた場合:本来の税金のほかに、加算税や延滞税がかかる場合があります。

申告書は、e-Tax(電子申告)や郵送でも出せます。亡くなった年の所得税の申告(準確定申告)は、別に4か月以内の期限があります。ほかの手続きの期限は死亡後の手続き一覧と期限にまとめています。

税理士に相談する目安

次のような場合は、早めに税理士や税務署に相談すると安心です。

  • 正味の遺産額が基礎控除を超えそう、または超えるかどうか分からない
  • 土地や建物があり、評価のしかたが分からない
  • 小規模宅地等の特例や、配偶者の税額の軽減を使いたい
  • 相続人どうしで遺産の分け方がまとまらない
  • 亡くなった人が事業をしていた、非上場の株を持っていた

国税庁のホームページには、財産の額を入れると申告が必要かどうかの目安がわかる「相続税の申告要否判定コーナー」もあります。借金が多く相続放棄を考える場合は、相続放棄の期限と手続きもあわせてご覧ください。

よくある質問

相続税は、遺産がいくらからかかりますか?

借金や葬式費用などを差し引いた正味の遺産額が、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるとかかります。相続人が配偶者と子2人なら4,800万円、子1人なら3,600万円です。基礎控除以下なら、申告も納税も要りません。

葬儀費用は、相続税の計算で差し引けますか?

差し引けます。通夜や告別式、火葬・埋葬・納骨、遺体の搬送、お寺への読経料などのお礼が対象です。香典返し、墓石や墓地の購入費、初七日や四十九日などの法事の費用は差し引けません(国税庁タックスアンサーNo.4129)。

お布施は葬式費用として差し引けますか?

葬式に当たって、お寺などに読経料などのお礼をした費用は、葬式費用として差し引けます。領収書が出ないこともあるため、支払った日、相手、金額を記録しておくと申告のときに役立ちます。含まれるか迷う費用は、税務署や税理士に確認してください。

相続税の申告期限を過ぎるとどうなりますか?

期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。期限までに申告しなかったり、少なく申告したりすると、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります。間に合わない事情があるときは、早めに税務署や税理士に相談してください。

相続税がかからない場合も、申告は必要ですか?

正味の遺産額が基礎控除以下なら、申告も納税も要りません。ただし、この判定は小規模宅地等の特例を使う前の額で行います。特例や配偶者の税額の軽減を使って税額がゼロになる場合は、申告をしないと使えません。

出典・参考にした資料

  1. 相続税法(第12条・第13条・第15条・第16条・第19条の2・第27条)e-Gov法令検索(2026-10-07 確認)
  2. 民法(第887条・第889条・第890条・第900条)e-Gov法令検索(2026-10-07 確認)
  3. No.4102 相続税がかかる場合国税庁(2026-10-07 確認)
  4. No.4108 相続税がかからない財産国税庁(2026-10-07 確認)
  5. No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金国税庁(2026-10-07 確認)
  6. No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)国税庁(2026-10-07 確認)
  7. No.4126 相続財産から控除できる債務国税庁(2026-10-07 確認)
  8. No.4129 相続財産から控除できる葬式費用国税庁(2026-10-07 確認)
  9. No.4152 相続税の計算国税庁(2026-10-07 確認)
  10. No.4158 配偶者の税額の軽減国税庁(2026-10-07 確認)
  11. No.4205 相続税の申告と納税国税庁(2026-10-07 確認)
  12. 相続税法基本通達 第13条《債務控除》関係(13−1・13−4・13−5)国税庁(2026-10-07 確認)
  13. 令和6年分 相続税の申告事績の概要国税庁(2026-10-07 確認)

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