遺品整理の進め方 いつから始めるか、相続放棄の注意と残す書類・業者選び
この記事の要点
- 遺品整理に法律の期限はありません。相続放棄を考えているなら処分を急ぎません。
- 捨てる前に、遺言書・通帳・借金の書類・保険証券などを探して取り分けます。
- 家庭のごみを運ぶ業者は、市町村の許可が必要です。複数の見積もりで比べます。
遺品整理に、法律で決まった期限はありません。気持ちが落ち着いてから、家族で話し合って進めてかまいません。ただし、相続放棄を考えているなら、遺品の処分を急がないでください。民法第921条は、遺産を処分した相続人は相続を認めたものとみなすと定めていて、放棄できなくなることがあります。
捨てる前に、遺言書、通帳、借金の書類、保険証券など、手続きに要る書類を探して取り分けます。業者に頼むときは、家庭のごみを運ぶには市町村の許可が要ることを知っておきましょう(廃棄物処理法第7条)。この記事では、始める時期の考え方と、整理の手順、残す書類の一覧、ごみの出し方と業者に頼むときの注意をまとめました。
始める時期の考え方
遺品整理の時期は、法律では決まっていません。目安になるのは、次のような別の手続きの期限です。
| 期限 | 手続き | 遺品整理との関係 |
|---|---|---|
| 知った時から3か月 | 相続放棄・限定承認 | 放棄を考えるなら、それまで処分しない |
| 知った日の翌日から4か月 | 準確定申告 | 故人の収入や医療費の書類が要る |
| 知った日の翌日から10か月 | 相続税の申告 | 財産を確かめる書類が要る |
| 知った日から3年 | 相続登記 | 不動産の権利証や固定資産税の通知が要る |
| 請求できる時から3年 | 保険金の請求 | 保険証券を探す |
| 契約による | 賃貸住宅の退去 | 大家さん・管理会社と日程を相談 |
(民法第915条、国税庁の案内、相続税法、不動産登記法第76条の2、保険法第95条より編集部作成)
賃貸住宅に住んでいた場合は、家賃がかかり続けるので、急ぎたくなることがあります。そのときも、相続放棄を考えているなら、先に専門家に相談してから手をつけます。手続きの期限の全体は死亡後の手続き一覧と期限と、手続きチェックリストで確かめられます。
相続放棄を考えているなら、処分を急がない
民法第921条は、次のような場合に、相続人が相続を認めた(単純承認した)ものとみなすと定めています。
- 相続人が遺産の全部または一部を処分したとき(財産の価値を保つための「保存行為」などは除く)
- 3か月以内に、限定承認も放棄もしなかったとき
- 放棄したあとでも、遺産を隠したり、勝手に使ったりしたとき
単純承認とみなされると、借金も含めて相続することになり、放棄できなくなります。
注意
借金があるかもしれない、相続するか決めていない、という段階では、次のことを控えます。
- 価値のある遺品(貴金属、時計、車、骨とう品、家電など)を売る・人にあげる・捨てる
- 預貯金を引き出して使う
- 形見分けで、価値のある物を持ち帰る
どこまでが「保存行為」として許されるかは、法律に細かい線引きがなく、事情で判断されます。迷うものは手をつけず、弁護士や司法書士、家庭裁判所の手続き案内に相談してください。
放棄すると決めたあとも、放棄した時に遺産を手元で管理しているなら、次の相続人などに引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務があります(民法第940条)。相続放棄の手続きは相続放棄の期限と手続きで詳しく説明しています。
遺品整理の手順
- 相続人で方針を決める:相続人が何人かいるとき、遺産はその人たちの共有になります(民法第898条)。誰が、いつ、どこまで片付けるか、費用を誰が出すかを先に話し合います。
- 書類と貴重品を探す:下の一覧を見ながら、捨てる前に取り分けます。郵便物やメールも、契約や借金の手がかりになります。
- 相続の方針を決める:借金の有無などを見て、相続するか放棄するかを決めます。期限は知った時から3か月です。
- 残す・形見分けする・売る・処分する、に分ける:大事な物は、処分する物と混ざらないよう別の部屋や箱に移します。
- 仏壇・位牌などの扱いを決める:仏壇や位牌、お墓は、遺産分けとは別に、祖先の祭祀を受け継ぐ人が引き継ぎます(民法第897条)。
- デジタル遺品を確かめる:スマホやパソコン、ネット上の契約を確かめます。
- ごみを自治体のルールで処分する:量が多いときは、市区町村の案内に従って、持ち込むか許可業者に頼みます。
捨てる前に探す書類
| 書類 | 使う手続き | 見つからないとき |
|---|---|---|
| 遺言書・エンディングノート | 遺産分け・故人の希望の確認 | 公正証書遺言は公証役場で、法務局に預けた遺言書は法務局で、あるか調べられる |
| 通帳・キャッシュカード・証券の書類 | 預貯金・株などの相続 | 郵便物や口座引き落としから探す |
| 借金・ローン・クレジットの書類、督促状 | 相続放棄を考える材料 | 郵便物、カードの明細を見る |
| 年金証書・年金の通知 | 年金を止める届出、未支給年金 | 年金事務所に相談 |
| 保険証券 | 死亡保険金の請求(3年で時効) | 保険会社からの郵便物を探す |
| 不動産の権利証・固定資産税の通知 | 相続登記(3年以内) | 法務局の「所有不動産記録証明」で、故人名義の不動産の一覧をとれる |
| 源泉徴収票・確定申告書・医療費の領収書 | 準確定申告(4か月以内) | 勤め先や税務署に相談 |
| 健康保険・介護保険の証や通知 | 資格の喪失、葬祭費の申請 | 市区町村の窓口に相談 |
| 公共料金・携帯電話・サブスクの書類 | 解約・名義変更 | 口座やカードの引き落としを見る |
年金や健康保険の届出の期限は、死亡後の手続き一覧と期限にまとめています。
遺言書を見つけたとき
封がしてある遺言書は、その場で開けないでください。民法第1004条は、遺言書を持っている人や見つけた相続人に、家庭裁判所に出して「検認」を受けるよう求めています。封のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などが立ち会わないと開けられません。検認を受けずに遺言を実行したり、家庭裁判所の外で開けたりすると、5万円以下の過料の対象になります(第1005条)。
公正証書で作った遺言と、法務局に預けてある遺言書は、検認が要りません(遺言書保管法第11条)。
形見分けのしかた
形見分けは、故人の愛用品を親族や親しかった人に分けることです。法律の手続きではありませんが、次の点に気をつけると、あとのもめごとを避けられます。
- 相続人みんなで決める:遺産は相続人の共有なので、一部の人だけで分けないようにします。
- 価値の高い物は遺産分けで扱う:貴金属や美術品など、お金に換えられる物は、遺産の分け方の話し合いに含めます。
- 相続放棄を考えている人は受け取る前に相談する:価値のある物を持ち帰ると、遺産を処分したとみなされるおそれがあります。
- 記録を残す:誰に何を渡したかをメモしておきます。
仏壇の引き継ぎや処分のしかたは仏壇の扱いで説明しています。
デジタル遺品
スマホやパソコンの中の写真、ネット銀行や証券の口座、毎月お金がかかる契約などを「デジタル遺品」と呼びます。
国民生活センターの「見守り新鮮情報」(2025年2月)は、次のような相談を紹介しています。
- 亡くなった兄のネット銀行の口座を確かめたかったが、スマホの画面ロックを解除できず、携帯電話会社でも初期化しかできないと言われた
- 夫の携帯電話を解約したあと、スマホのセキュリティのサブスクが残っていた。IDとパスワードがないとすぐには解約できないと言われた
確かめる手順は次のとおりです。
- 口座の引き落としとカードの明細を見る:毎月引き落とされている契約がわかります。
- 郵便物とメールを見る:ネット銀行や証券会社からの通知が来ていないか確かめます。
- スマホは確認が終わるまで初期化しない:初期化すると中のデータは戻りません。
- サービスごとに解約や相続の手続きを聞く:亡くなった人の契約の手続きは、会社ごとに違います。
家庭のごみの出し方と、業者に頼むときの注意
家庭のごみは市町村のルールで
遺品整理で捨てる物は、家庭から出る「一般廃棄物」です。廃棄物処理法第7条は、一般廃棄物の収集や運搬を仕事にする人に、市町村長の許可を求めています。許可なく行えば、5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金の対象です(第25条)。
国民生活センターと環境省は、家庭のごみは、市町村の委託か一般廃棄物処理業の許可を受けた業者でなければ運べないと説明しています。産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では、家庭のごみは運べません。
補足
エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は、家電リサイクル法の対象です。ふつうのごみには出せず、買った店などに引き取ってもらうのが基本で、リサイクル料金と収集運搬料金がかかります。中古品として売れる物は、古物商の許可を持つ店に買い取りを頼めます。
自治体の案内の例
量が多いときの出し方は、市町村によって違います。各市の公式サイトの案内です。
| 地方・市 | 一度に多く出るときの案内 |
|---|---|
| 北海道・札幌市 | ごみステーションには1回400リットル(40リットルの袋10袋)以下ずつ。超える量は市の許可業者に依頼。処理施設への持ち込みもできる(有料) |
| 関東・横浜市 | まとめて集積場所に出せない。市の施設に持ち込むか、一般廃棄物収集運搬の許可業者に依頼。無許可業者の高額請求に注意 |
| 中国・岡山市 | 遺品整理に対応できる一般廃棄物収集運搬許可業者の一覧を公開 |
| 九州・福岡市 | 遺品整理と引越しのごみに限った収集運搬の許可制度があり、許可業者の一覧を公開 |
(札幌市は2018年、横浜市は2026年8月、岡山市は2020年、福岡市は2026年6月の更新のページ)
自分の市区町村の案内は、次の手順で調べます。
- 「〇〇市 遺品整理 ごみ」「〇〇市 一時多量ごみ」で検索する。「引越しごみ」のページに書かれていることもあります。
- 許可業者の一覧を探す。「〇〇市 一般廃棄物収集運搬業 許可業者」で検索すると、市が公開している一覧が見つかることがあります。
- わからなければ、ごみの担当課に電話する。清掃事務所、環境事業所、資源循環局など名前はさまざまです。
業者に頼むときに確かめること
国民生活センターには、遺品整理サービスについての相談が寄せられています。見積もりでせかされて契約した、高額なキャンセル料を請求された、見積額の2倍を請求された、残すよう頼んだ物を捨てられた、といったものです。同センターが2018年に公表した資料では、こうした相談は2013年度の73件から、2016年度には114件に増えていました。
| 確かめること | 見るポイント |
|---|---|
| 許可 | 家庭のごみを運ぶ一般廃棄物の許可があるか。ない場合、許可業者に運ばせるのか |
| 見積もり | 複数の業者からとる。見積もり自体に料金がかかるか |
| 見積書の中身 | 作業の範囲、人数、運ぶ量、追加料金がかかる場合 |
| キャンセル料 | いつまでなら無料か。いくらかかるか |
| 残す物 | 残す物と捨てる物を分け、業者にもはっきり伝える |
| 買い取り | 買い取る物があるなら、別に明細を出してもらう |
遺品整理の費用について、全国の相場を示す公的な調査は見つかりませんでした。部屋の広さや物の量、地域で大きく変わるので、見積もりを並べて比べます。納得できない請求を受けたら、消費者ホットライン(局番なしの188)で、近くの消費生活センターに相談できます。
自分の物を元気なうちに整理しておく方法は、終活でやること一覧とエンディングノートの書き方で説明しています。
よくある質問
遺品整理はいつから始めればいいですか?
法律で決まった時期はありません。ただ、相続放棄を考えている場合は、遺品を処分すると放棄できなくなることがあるので、方針が決まるまで処分を待ちます。相続放棄の期限は、相続が始まったことを知った時から3か月です。賃貸住宅なら、退去の期限を大家さんや管理会社と相談します。
相続放棄をする前に遺品整理をしてもいいですか?
注意が必要です。民法第921条は、相続人が遺産の全部または一部を処分したときは、相続を認めた(単純承認した)ものとみなすと定めています。財産の価値を保つための保存行為は除かれますが、どこまでが許されるかは事情で判断されます。放棄を考えているなら、売る・あげる・捨てる前に、弁護士や司法書士に相談してください。
遺品整理で遺言書が出てきたらどうすればいいですか?
封がしてある遺言書は、その場で開けません。家庭裁判所で相続人などが立ち会って開封することになっており、勝手に開けると5万円以下の過料の対象になります(民法第1004条・第1005条)。公正証書遺言と、法務局で保管されている遺言書は、家庭裁判所の検認が要りません。
遺品整理のごみを業者に運んでもらうときの注意は?
家庭から出るごみは一般廃棄物で、収集や運搬を仕事にするには市町村長の許可が要ります(廃棄物処理法第7条)。産業廃棄物処理業や古物商の許可では運べません。依頼する前に、住んでいる市区町村の許可業者かどうかを確かめます。
スマホやパソコンの中の遺品はどうすればいいですか?
まず、ネット銀行・証券、サブスクなど、お金がかかる契約がないかを確かめます。国民生活センターには、画面のロックを解除できず中を確認できなかった例や、IDとパスワードがわからずサブスクをすぐ解約できなかった例が寄せられています。初期化するとデータは戻らないので、確認が終わるまで初期化しないでおきます。
出典・参考にした資料
- 民法(第896条〜第898条・第915条・第918条・第921条・第940条・第1004条・第1005条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律(第11条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第2条・第2条の4・第7条・第25条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 特定家庭用機器再商品化法施行令(第1条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 保険法(第95条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 不動産登記法(第76条の2)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 相続税法(第27条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)国税庁(2026-10-08 確認)
- 所有不動産記録証明制度について法務省(2026-10-08 確認)
- 自筆証書遺言書保管制度 05 証明書について法務省(2026-10-08 確認)
- 2 遺言(公正証書遺言の検索)日本公証人連合会(2026-10-08 確認)
- こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル-料金や作業内容に関するトラブルが発生しています-国民生活センター(2026-10-08 確認)
- 同上 報告書本文(PDF)国民生活センター(2026-10-08 確認)
- 見守り新鮮情報 第505号 始めましょう!デジタル終活国民生活センター(2026-10-08 確認)
- 廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!(Q&A)環境省(2026-10-08 確認)
- 引越しや遺品の整理などで一時的に多量に出るごみの処理について札幌市(2026-10-08 確認)
- 一時多量ごみ(引っ越しや遺品整理など)横浜市(2026-10-08 確認)
- 一時大量ごみの収集・処分及び遺品整理が対応可能な許可業者について岡山市(2026-10-08 確認)
- 遺品整理及び引越時に発生する家庭系ごみに限定した一般廃棄物収集運搬業許可について福岡市(2026-10-08 確認)