葬儀のあと

法事の食事(お斎)とは 会場の選び方・献立・席順・施主の挨拶・御膳料

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • お斎は法要のあとに僧侶や参列者と食事を共にする仏事。単なる食事会ではないとされます。
  • 精進料理が基本とされてきました。各地に、赤い色や肉・魚を入れないなどの決まりがあります。
  • 僧侶が会食を辞退したら、お布施とは別に「御膳料」を包みます。会食を省く形もあります。
目次
  1. お斎とは
  2. 会場の選び方
  3. 献立で避けるとされるもの
  4. 人数と席の決め方
  5. 当日の流れと施主の挨拶
  6. 僧侶が会食を辞退したとき(御膳料)
  7. 費用の考え方
  8. 浄土真宗の場合

法事のあとの食事は「お斎(おとき)」と呼ばれます。法要を終えたあと、僧侶や参列者と食事を共にする仏事で、単なる食事会ではないと各宗派は説明しています。会場は自宅、お寺、料理店、会館などがあり、法要と同じ場所で続けることも、場所を移すこともあります。

僧侶が会食を辞退したときは、お布施とは別に「御膳料(おぜんりょう)」を包みます。会食の費用について、調査元のはっきりした全国の統計は見当たりませんでした。この記事では金額を載せず、会場の選び方、献立、席順、施主の挨拶の例をまとめています。各地の郷土料理に残る「法事のときの決まりごと」も、農林水産省の記録から地方別に集めました。

お斎とは

「斎」は、もともと仏教の出家者が正午より前の決まった時間(とき)にとる食事を指しました。ブリタニカ国際大百科事典によると、のちに肉食をしないことを斎と呼ぶようになり、さらに仏事の食事全般を指すようになりました。

宗派の説明は、どれも「お斎は仏事の一部」という点で共通しています。

  • 臨済宗妙心寺派:施主にとっては布施の行い、参列者にとっては精進の心でいただく修行。お斎はお食事会ではなく、僧侶や参列者と食事を共にする仏事
  • 真宗大谷派:法要後の単なる食事でも宴会でもなく、仏事のひとつ
  • 天台宗:遠方の人とも交わり、故人を語り合うのに食事の席はふさわしい。招く側も招かれる側も、少々の不手際をとがめないこと

似た言葉との違いを表にしました。

呼び名 いつの食事か 説明
お斎(おとき) 法要のあと 仏事の食事。法事の会食を指すことが多い
精進落とし 本来は忌明け後。今は葬儀の日が多い 精進をやめ、ふだんの生活に戻る区切りの食事
通夜ぶるまい 通夜のあと 弔問客に食事や飲み物を出す

(全互協、精選版日本国語大辞典、ブリタニカ国際大百科事典をもとに作成)

全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)は、精進落としは本来、四十九日の忌明けを待って行う最初の食事だったと説明しています。今では、葬儀の日に続けて行うことがほとんどです。

会場の選び方

全互協によると、法事は、法要を営んだ場所でそのまま会食に移る場合と、料亭や会館などへ移る場合があります。最近は、施主の住まいの事情などから、法要と別の場所で会食することも増えています。会場ごとの特徴を整理しました。

会場 向いている場合 準備すること
自宅 家族や近い親族だけ 仕出しの注文、座布団や食器、片付けの段取り
お寺 菩提寺で法要を営むとき 会食に使える部屋があるか、料理の持ち込みができるか確かめる
料理店・ホテル 人数が多い、移動しやすい場所がよい 個室の予約、「法事の席」と伝える、墓地からの移動手段
会館・斎場 法要から会食まで1か所で済ませたい 法要室と会食室の空き、料理の手配先

(全互協の説明をもとに編集部が整理)

法要のあとにお墓参りをするなら、臨済宗妙心寺派の冊子が示すように「法要→お墓参り→お斎」の順になります。お墓から会食の会場までの移動手段と時間も、あわせて考えておきます。

会食をしない場合

家族だけの法要などで、会食を省く家もあります。そのときは、案内状や電話で「会食なし」と先に伝えておきます。全互協は、通夜の食事の代わりに折り詰めなどを持ち帰ってもらうケースが増えていると紹介しています。法事でも、持ち帰りの料理や品物でお礼に代える方法があります。

献立で避けるとされるもの

仏事の食事は、肉や魚を使わない精進料理が基本とされてきました。真宗大谷派は、お斎は肉や魚介類を用いず、穀物や野菜を主にした精進料理が基本と説明しています。殺生を戒める教えからきているとしています。日本大百科全書も、かつて仏事の食事はすべて精進料理だったと記しています。

ただ、今はそこまでこだわらない家が多くなっています。全互協は、通夜の食事について、かつては肉や魚を避ける習わしがあったが、最近はあまりこだわらないとしています。料理店に注文するときは「法事の席」と伝えておくと、祝い事を思わせる飾りや色を避けてもらいやすくなります。

各地の郷土料理に残る決まりごと

農林水産省のデータベース「うちの郷土料理」の全1,365品を編集部が確認し、法事や仏事についての記述がある料理を地方ごとに選びました。「赤い色を入れない」「肉や魚を入れない」という決まりが、各地に見られます。

地方 料理(都道府県) 法事・仏事のときの決まりごと
東北 けいらん(青森) 慶事は紅白、弔事は小振りにして青や緑に色付け
東北 くるみ豆腐(岩手) お盆や法事に、精進料理として刺身の代わりに
関東 白あえ(栃木) 葬式のときは人参など赤い色の食材を入れない
関東 こんにゃくの白和え(群馬) 祝い事は人参で赤を加え、法事では入れない
関東 煮合い(茨城) 仏事は人参を入れず白い料理に仕上げる
北陸・中部 のっぺ(新潟) 仏事は乱切りや細い短冊、三角切りにすることも
北陸・中部 いもなます(長野) 仏事のときは人参を入れない
近畿 かきまぜ(三重) 葬儀のときは人参を入れない
近畿 ひとかわすし(滋賀) 法事や葬式は、じゃこを使わず湯葉で精進の具に
近畿 うずみ(和歌山) 法事の前日(逮夜)に食べて供養する
中国 八寸(広島) 不祝儀は具の種類を偶数にし、黒い器を使う
中国 のっぺい(山口) 仏事は鶏肉を入れず、ぎんなんを加える
四国 いぎす豆腐(愛媛) お盆や法事のときによく食べる
九州 のっぺ汁(佐賀) 仏事はしいたけとごぼうで味を出し、祝いは鶏肉
九州 がね揚げ(熊本) 仏事に魚が使えないため、さつまいもの揚げ物に
沖縄 ラフテー(沖縄) 法事のときでも豚肉が使われる

(農林水産省「うちの郷土料理」の各料理のページをもとに編集部が要約。2026年10月8日確認。北海道の料理で法事を明記したものは見当たりませんでした)

決まりごとは、同じ県の中でも地域や家で違います。広島の八寸の例では、祝儀は具の種類を奇数にして朱の器、不祝儀は偶数にして黒い器と、器の色まで分けています。

大分県が紹介する杵築市の法事のお斎は、ご飯、汁、おひら(平椀の煮物)、おつぼ(小鉢の煮物)、酢の物、白和えの組み合わせです。手作りのお斎は減っていますが、こうした献立の形はお寺の行事などに残っています。

補足

沖縄の例のように、法事でも肉料理を出す地域があります。農林水産省の記録では、神奈川県の牛鍋も、法事など人が集まる席で食べられることが多い料理とされています。精進にこだわるかどうかは、地域と家の考えで決めてかまいません。

人数と席の決め方

人数は、出欠の返事がそろってから決めます。全互協も、招かれた人は引き出物や会場の準備のために早く返事をするよう勧めています。数えるときは、次の分を忘れないようにします。

  1. 参列者:出席の返事をもらった人。子どもは大人と同じ料理か、子ども向けの料理かを確かめる
  2. 僧侶:会食に出てもらえるかを、法要をお願いするときに聞いておく
  3. 施主と家族:もてなす側も同じ料理を食べる
  4. 予備:急な出席に備えて、店と相談しておく

席順

全互協は、葬儀のあとの精進落としについて、上座には僧侶や知人・友人、手伝ってくれた人が座ると説明しています。遺族は末席に座り、もてなす側に回ります。法事のお斎もこの考え方に沿って、次のように決めると迷いません。

席 座る人
いちばんの上座(一般に入口から遠い席) 僧侶
上座に近い席 故人と縁の深い親族、遠方から来た人
中ほどの席 そのほかの親族、友人・知人
下座(入口に近い席) 施主と家族

施主が下座に座ると、料理の追加や僧侶の見送りに動きやすくなります。

当日の流れと施主の挨拶

お斎の一般的な流れの例です。宗派や地域、会場によって変わります。

  1. 施主の挨拶:参列のお礼と、会食を始めることを短く伝えます。
  2. 献杯(けんぱい):故人をしのんで杯を捧げます。全互協は、葬儀後の会食では僧侶に献杯の音頭をお願いすると説明しています。親族の年長者にお願いすることもあります。
  3. 会食:施主と家族は席を回り、お礼を伝えます。
  4. 施主の結びの挨拶:お礼を述べて会を閉じます。引き出物はこのときか、帰り際に渡します。

挨拶は短くてかまいません。編集部で作った例を載せます。故人の呼び方や法要の名前は、状況に合わせて変えてください。

ポイント

始めの挨拶の例 本日は、亡き父〇〇の一周忌にお集まりいただき、ありがとうございました。おかげさまで、無事に法要を終えることができました。ささやかですが食事を用意しました。父の思い出話などをしながら、ごゆっくりお過ごしください。

結びの挨拶の例 本日は長い時間おつきあいいただき、ありがとうございました。皆さまにお話を聞かせていただき、父も喜んでいると思います。これからも変わらぬおつきあいをお願いいたします。お気をつけてお帰りください。

献杯は、デジタル大辞泉によると、亡くなった人を悼んで杯を捧げることも指す言葉です。曹洞宗は、法要の始めと終わりにも施主が短く挨拶する流れを紹介しています。

僧侶が会食を辞退したとき(御膳料)

僧侶が会食に出られないときは、お膳の代わりとして「御膳料」を包みます。全互協は、法要で僧侶が会食(お斎)を辞退した場合は、御膳料をお布施とは別に包むとしています。献辞辞典(株式会社ササガワ)も、本来はお膳を用意するところを、用意できないことに代えて贈る謝礼の表書きだと説明しています。

項目 内容
包むとき 僧侶が会食を辞退したとき、会食の席を設けないとき
袋 白い封筒。全互協は水引はつけないとしている
表書き 御膳料
渡し方 お布施と別の封筒に入れる。渡す時機はお寺に確かめる

御膳料の金額について、法事の場面の調査は見当たりません。全互協は、通夜の席で僧侶が食事を辞退した場合について、1万円程度の御膳料を目安に挙げています。法事でも同じでよいかは地域やお寺で違うので、法要をお願いするときに聞いておくと安心です。お布施や御車代とあわせた考え方はお布施の相場と渡し方にまとめています。

費用の考え方

会食の費用について、調査元と調査年のはっきりした全国の統計は見当たりませんでした。料理店の価格は地域や内容で大きく違うため、この記事では金額の目安を載せていません。予算を組むときは、次の項目を足し上げます。

項目 確かめること
料理 1人分の価格×人数。子どもの料理の有無
飲み物 料理に含まれるか、別料金か
会場 個室料、法要室の使用料
僧侶の分 会食に出るなら料理、辞退なら御膳料
持ち帰り 折り詰めや引き出物を渡すか

全互協は、参列者が包む御供物料(法事の香典)の金額は、法要の大きさや会食があるかどうか、地域の習わしによって変わるとしています。会食の有無も、参列者が金額を考える材料になるということです。参列者のお金の目安と施主が用意するお金の全体は、法事で包むお金のまとめをご覧ください。

注意

国税庁によると、初七日など法事のためにかかった費用は、相続税の計算で遺産から差し引ける「葬式費用」に入りません。葬儀の日の食事と法事の会食を同じ請求書にまとめると、あとで分けにくくなります。

浄土真宗の場合

浄土真宗でも、法事のあとにお斎をいただきます。真宗大谷派は、お斎を仏事のひとつとし、食事の前と後に唱える言葉を紹介しています。農林水産省の記録には、富山県や福井県の「報恩講料理」のように、浄土真宗の行事で出される精進料理が各地に残っています。

法事の準備全体は法事と法要の違いに、参列者へのお返しは法事のお返し・引き出物にまとめています。

よくある質問

法事の食事は何を出せばいいですか?

もとは肉や魚を使わない精進料理が基本とされてきました。今は料理店の法事向けの献立や仕出しを使うことが多く、全日本冠婚葬祭互助協会も、通夜の食事について最近はあまりこだわらないと説明しています。注文するときに「法事の席」と伝えておくと、祝い事を思わせる飾りや色を避けてもらいやすくなります。

法事の食事で避けたほうがいいものはありますか?

仏事の食事は、殺生を戒める教えから肉や魚を使わない精進料理が基本とされてきました。農林水産省の郷土料理の記録には、仏事では人参など赤い色を入れない(栃木・群馬・茨城・長野・三重)、鶏肉を入れない(山口・佐賀)といった決まりが各地に残っています。一方、沖縄では法事でも豚肉料理が出されます。地域や家の習わしに合わせてください。

お坊さんが食事を辞退したらどうしますか?

全日本冠婚葬祭互助協会によると、僧侶が会食(お斎)を辞退した場合は、お布施とは別に「御膳料」を包みます。白い封筒に「御膳料」と書きます。金額は地域やお寺で違うので、法要をお願いするときに確かめておくと安心です。

法事で会食をしなくても失礼になりませんか?

会食をするかどうかに決まりはありません。家族だけの法要や、参列者の負担を考えて会食を省く家もあります。その場合は、案内状に「会食なし」と書いておくと参列者が予定を立てやすくなります。持ち帰りの料理や品物を用意する方法もあります。

法事の食事の席順はどうしますか?

全日本冠婚葬祭互助協会は、葬儀後の精進落としについて、上座に僧侶やお世話になった人が座り、遺族は末席に座ってもてなすと説明しています。法事のお斎も、招いた側の施主と家族が下座に座る考え方で決めると迷いません。

出典・参考にした資料

  1. お斎(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  2. 精進落(精選版 日本国語大辞典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  3. 熨斗(日本大百科全書)コトバンク(2026-10-08 確認)
  4. 献杯(デジタル大辞泉)コトバンク(2026-10-08 確認)
  5. 御膳料(献辞辞典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  6. 葬儀・法事・お墓のこと(お斎・法事での持ち物)真宗大谷派(2026-10-08 確認)
  7. Q&A(仏事の後にいただくお斎にはどのような意味があるのですか?)天台宗(2026-10-08 確認)
  8. 臨済宗の仏事(オンライン版)臨済宗妙心寺派(2026-10-08 確認)
  9. 法事の営み方曹洞宗(曹洞禅ネット)(2026-10-08 確認)
  10. お葬式のマナー:法事ってなに?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  11. お葬式のマナー:僧侶の接待のしかたは?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  12. お葬式のマナー:通夜ぶるまいの進めかたは?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  13. お葬式のマナー:精進落としは遺族は末席に一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  14. お葬式のマナー:法要の進め方は?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  15. お葬式のマナー:法要に招かれたらどうする?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  16. お葬式のマナー:法事(法要)に出席するときは?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  17. うちの郷土料理(くるみ豆腐・おくずかけ・けいらん・白あえ・こんにゃくの白和え・煮合い・牛鍋・のっぺ・いもなます・かきまぜ・ひとかわすし・うずみ・八寸・のっぺい・茶ごめ・いぎす豆腐・のっぺ汁・がね揚げ・つぼ汁・あいまぜ・ラフテー・ジーマーミ豆腐)農林水産省(2026-10-08 確認)
  18. 59.法事のお斎(杵築市)大分県(2026-10-08 確認)
  19. No.4129 相続財産から控除できる葬式費用国税庁(2026-10-08 確認)

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