葬儀のあと

法事のお返し・引き出物 香典返しとの違い・品物と金額の考え方・のしと表書き

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • 引き出物は法要に来てくれた人へのお礼で、当日渡します。葬儀の香典返しとは別です。
  • 表書きは「志」が広く使われ、西日本では「粗供養」、神式などでは「偲び草」も使います。
  • 金額の全国調査は見当たりません。会食の有無と御供物料を目安に、一律の品を用意します。
目次
  1. 香典返しとの違い
  2. 品物の考え方
  3. 金額の考え方
  4. 数は家族単位で考える
  5. 掛け紙(のし紙)と表書き
  6. 渡すタイミング
  7. 浄土真宗・神式・キリスト教式の場合

法事の引き出物は、法要に来てくれた人へのお礼として、当日に渡す品物です。全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)も、法要では参列者に返礼品を渡すと説明しています。葬儀でいただいた香典へのお礼である「香典返し」とは、何へのお礼かが違います。

表書きは「志(こころざし)」が広く使われ、西日本では「粗供養(そくよう)」も多く使われます。引き出物の金額について、調査元のはっきりした全国の統計は見当たりませんでした。この記事では、香典返しとの違い、品物と金額の考え方、家族単位での数え方、掛け紙と表書きの地域差、渡し方をまとめています。

香典返しとの違い

香典返しと法事の引き出物を、全互協などの説明をもとに比べました。

項目 法事の引き出物 香典返し
何へのお礼か 法要に来てくれたこと、御供物料 葬儀でいただいた香典
いつ 法要の当日 葬儀の当日か、四十九日の忌明け後
渡し方 会場で手渡し 当日に手渡しか、忌明け後に挨拶状を添えて送る
品物の決め方 全員に同じ品が多い 当日は一律、忌明け後は香典の額に合わせて
主な表書き 志、粗供養 志、忌明志、満中陰志

(全互協、デジタル大辞泉、献辞辞典をもとに編集部が作成)

全互協は、香典返しは香典のほぼ半額の品を贈る「半返し」が一般的だとしています。香典返しの詳しい準備は香典返しの時期と金額にまとめています。

四十九日法要の日は両方が重なることがある

四十九日法要では、その日に来てくれた人への引き出物と、葬儀の香典への香典返しが同じ日に重なることがあります。同じ人に両方を渡す場合も、何へのお礼かは別です。香典返しを葬儀の当日に済ませた家なら、四十九日法要の日は引き出物だけを用意します。

まとめて1つの品にするか、分けて渡すかは、地域や家の考えで決めます。品物を分けるときは、表書きも分けると受け取った人にわかりやすくなります。

品物の考え方

法事の引き出物に決まった品はありません。持ち帰る人の負担を考えて、次の点で選ぶと失敗が少なくなります。

  1. 軽くてかさばらない:電車やバスで来る人もいます。重い瓶や大きな箱は避けます。
  2. 日持ちがする:お茶、のり、乾物、焼き菓子など。生ものは避けます。
  3. 好みが分かれにくい:香りの強いものや、使う人を選ぶものは避けます。
  4. お祝いを思わせない:紅白の包装や、祝い事向けの品は避けます。

全互協は、香典返しの品にはタオル、シーツ、お茶などの家庭用品が多いと紹介しています。法事の引き出物でも、お茶やのり、菓子など、使えばなくなる品がよく選ばれるとされます。持ち帰り用の手提げ袋も一緒に用意しておくと、渡すときにあわてません。

地域に伝わる引き出物の例

農林水産省の「うちの郷土料理」には、法事の引き出物として配られてきた料理の記録があります。

地域 料理 記録の内容
石川県 みたま(黒豆入りのおこわ) 昔から法事や上棟式の引き出物として贈る習わし
愛知県 もろこずし 法事の引き出物などにも使われてきた

(農林水産省「うちの郷土料理」をもとに作成。2026年10月8日確認)

このように、地域で決まった品がある場合もあります。親族の年長者に、その土地で何を配ってきたかを聞いてみると、決めやすくなります。

補足

真宗大谷派によると、法事に招かれた人は、金封と一緒に菓子折りを持参することが多くなっています。お菓子はお参りした人たちに配られることも多いので、個包装のものが好まれるとしています。参列者からいただいたお菓子を、帰りに分けて持ち帰ってもらう家もあります。

金額の考え方

法事の引き出物の金額について、調査元と調査年がはっきりした全国の統計は見当たりませんでした。このため、この記事では金額の目安を載せていません。考え方の手がかりは次のとおりです。

  • 参列者が包む御供物料:全互協は、法要の香典は葬儀の香典の半額程度が目安としています。法要の大きさや会食があるかどうか、地域の習わしによっても金額は変わるとしています。
  • 会食の有無:会食をふるまう場合は、会食と引き出物を合わせてお礼と考える家があります。会食がない場合は、引き出物を少し手厚くしたり、持ち帰りの料理を添えたりします。
  • 全員に同じ品:法事では、全員に同じ品を渡すことが多いです。全互協は、葬儀の当日返しでは一律の品を渡し、香典が特に多かった人には忌明け後に別の品を贈る配慮も必要だとしています。法事でも、多く包んでくれた人には後日お礼を送る方法があります。

施主が法事の日に用意するお金の全体は、法事で包むお金のまとめに整理しています。

数は家族単位で考える

引き出物の数は、出欠の返事がそろってから決めます。全互協も、招かれた人には、引き出物や会場の準備のために早めに返事をするよう勧めています。

参列のしかた 用意する数の考え方
1人で参列 1つ
夫婦や家族で参列し、御供物料を1つにまとめた 1家族に1つ
同じ家族でも、別々に御供物料を包んだ 包んだ単位ごとに1つ
御供物料を辞退してもらった、子どもだけ 家の考えで。お菓子などを用意する家も
欠席したが御供物料を送ってくれた 法要のあと、お礼状を添えて送る

(編集部が整理。地域や家の習わしがあればそれに合わせます)

夫婦や家族で参列した人には、1家族に1つ渡すのが一般的とされます。御供物料を家族でまとめて包むことが多いためです。急な参列者に備えて、予備を2〜3個用意しておくと安心です。余った品は、後日届いた御供物料のお礼に使えます。

掛け紙(のし紙)と表書き

品物には、水引を印刷した掛け紙をかけます。熨斗(のし)は、もともと「不祝儀ではない」印として贈り物に添えたものです。日本大百科全書と世界大百科事典によると、凶事の贈り物にはつけないのが本来の形です。右上に飾りの「のし」がない掛け紙を選びます。

  • 水引:世界大百科事典によると、弔事には黒白、藍白、黄白、銀一色、白一色などを使い、結び切り(ほどけない結び方)にします。地域の習わしに合わせます。
  • 表書き:水引の上に書きます。下の表から選びます。
  • 名前:水引の下に、施主の姓か「〇〇家」と書きます。

表書きの早見表

表書き 主に使う場面 地域・宗教
志 法事の引き出物、香典返し 広く使う。神式の香典返しでも
粗供養 通夜・葬儀・法要の返礼 特に西日本で多い
満中陰志 四十九日の忌明け後の香典返し 関西など西日本で使う
忌明志 忌明けの法要後の香典返し 仏式。神式の五十日祭でも
茶の子 忌明けや年忌の返礼 神式。地方によっては仏式でも
偲び草 忌明けや年祭・記念式の返礼 神式・キリスト教式

(デジタル大辞泉、献辞辞典をもとに作成。2026年10月8日確認)

デジタル大辞泉は「志」を、香典返しや法事の引き出物の表に書く言葉と説明しています。献辞辞典によると「粗供養」は、供養をいただいたお返しの粗品という意味です。「茶の子」は、お茶に添える小さな菓子を指した言葉が、粗品の代名詞になったものです。

迷ったら「志」にすると、どの地域でも使えます。お住まいの地域の習わしは、地域で違う葬儀のしきたりも参考にしてください。

渡すタイミング

引き出物は、法要の当日に渡します。一般的な渡し方の例です。

  1. 会食がある場合:お斎(会食)の終わりに、施主の結びの挨拶に合わせて各席に配るか、帰り際に手渡しします。
  2. 会食がない場合:法要やお墓参りを終えて解散するときに、施主か家族が手渡しします。
  3. 欠席した人:御供物料を送ってくれた人には、法要のあとにお礼状を添えて送ります。

席に置いておく場合は、会食の前に配っておく家もあります。会場が料理店や会館なら、引き出物を席に配ってもらえるか、事前に聞いておくと当日の手間が減ります。会食の進め方は法事の食事(お斎)にまとめています。

浄土真宗・神式・キリスト教式の場合

浄土真宗:真宗大谷派は、亡くなった人を霊としてまつらない考えから、金封に「御霊前」を使わないとしています。引き出物の表書きについて、宗派の公式な説明は見当たりませんでした。献辞辞典によると「志」は感謝の気持ちを表す言葉で、霊や供養の考え方を含まないため、浄土真宗でも使いやすい表書きです。

神式:献辞辞典によると、神式の忌明けや年祭(式年祭)の返礼には「偲び草」「茶の子」が使われます。全互協は、神式の香典返しの水引は銀色か白色とし、黒白は使わないとしています。

キリスト教式:全互協によると、本来は香典返しのしきたりはありません。記念の集いで品を渡すなら、献辞辞典では表書きに「偲び草」が使われるとしています。全互協は「記念品」とする例も挙げています。

注意

国税庁によると、香典返しの費用や、初七日など法事のためにかかった費用は、相続税の計算で遺産から差し引ける「葬式費用」に入りません。

法要の準備全体は法事と法要の違いに、一周忌の準備は一周忌の準備と当日の流れにまとめています。

よくある質問

法事の引き出物と香典返しは違いますか?

違います。香典返しは葬儀でいただいた香典へのお礼で、全日本冠婚葬祭互助協会によると葬儀の当日か四十九日の忌明け後に渡します。法事の引き出物は、法要に来てくれた人へのお礼で、法要の当日に渡します。四十九日法要の日は両方が重なることがあるので、何へのお礼かを分けて考えます。

法事の引き出物の表書きは何と書きますか?

「志」が広く使われます。献辞辞典によると、西日本では「粗供養」も多く使われます。神式やキリスト教式では「偲び草」を使うことがあります。水引の下には施主の姓か「〇〇家」と書きます。

法事の引き出物は1家族に1つでいいですか?

夫婦や家族で参列した人には、1家族に1つ渡す考え方が一般的とされます。御供物料(法事の香典)を家族でまとめて包むことが多いためです。親子でも別々に包んでくれた場合は、それぞれに渡すと丁寧です。

法事の引き出物の金額はいくらですか?

調査元のはっきりした全国の統計は見当たりませんでした。参列者が包む御供物料は、全日本冠婚葬祭互助協会によると葬儀の香典の半額程度が目安です。会食をふるまう場合は会食と引き出物を合わせてお礼と考え、会食がない場合は品物を少し手厚くする、という考え方があります。

法事を欠席した人から御供物料が届いたら?

法要のあと、お礼状を添えて引き出物を送ると丁寧です。届いたことを電話や手紙で先に伝えておくと、相手も安心します。

出典・参考にした資料

  1. お葬式のマナー:香典返しは?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  2. お葬式のマナー:法要の進め方は?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  3. お葬式のマナー:法要に招かれたらどうする?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  4. お葬式のマナー:法事(法要)に出席するときは?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
  5. 臨済宗の仏事(オンライン版)臨済宗妙心寺派(2026-10-08 確認)
  6. 葬儀・法事・お墓のこと(法事での持ち物)真宗大谷派(2026-10-08 確認)
  7. 法事の営み方(葬儀・法事の表書き)曹洞宗(曹洞禅ネット)(2026-10-08 確認)
  8. 志(デジタル大辞泉)コトバンク(2026-10-08 確認)
  9. 粗供養(献辞辞典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  10. 満中陰志(デジタル大辞泉・献辞辞典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  11. 忌明志(献辞辞典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  12. 偲び草(献辞辞典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  13. 茶の子(献辞辞典)コトバンク(2026-10-08 確認)
  14. 水引(世界大百科事典・日本大百科全書ほか)コトバンク(2026-10-08 確認)
  15. 熨斗(日本大百科全書)コトバンク(2026-10-08 確認)
  16. みたま 石川県(うちの郷土料理)農林水産省(2026-10-08 確認)
  17. もろこずし 愛知県(うちの郷土料理)農林水産省(2026-10-08 確認)
  18. No.4129 相続財産から控除できる葬式費用国税庁(2026-10-08 確認)

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