準確定申告とは 必要な人と不要な人の早見表・期限4か月・医療費控除と付表
この記事の要点
- 亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得を、相続人が4か月以内に申告します。
- 年金だけで年400万円以下、ほかの所得20万円以下なら原則不要。還付のために出すことはできます。
- 医療費控除は亡くなるまでに本人が払った分だけ。相続人が2人以上なら付表を添えます。
目次
準確定申告は、亡くなった人の所得税を、相続人が代わりに申告する手続きです。亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得を計算し、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に、亡くなった人の住所地の税務署に出します。必要かどうかの基準は、ふつうの確定申告と同じです。年金だけを受けていて、年金が年400万円以下、ほかの所得が20万円以下なら、原則として要りません。ただし、医療費が多かった場合などは、出すと税金が戻ることがあります。
準確定申告が必要な人・不要な人の目安
準確定申告が必要なのは、亡くなった人について、ふつうの確定申告が必要な場合です(所得税法第125条)。国税庁の説明をもとに、よくある例を表にしました。
| 亡くなった人の収入 | 準確定申告 | 確かめること |
|---|---|---|
| 公的年金だけ。年400万円以下で、ほかの所得が20万円以下 | 原則不要 | 医療費などで還付を受けるなら出せる |
| 公的年金が年400万円を超える | 必要になることがある | 年金の源泉徴収票の額 |
| 会社員で、在職中に亡くなった | 原則不要 | 勤務先が年末調整をしたか。ほかの所得が20万円以下か |
| 給与が2か所以上、または給与以外の所得が20万円超 | 必要になることがある | すべての収入の合計 |
| 個人事業・農業・不動産の賃貸などの収入 | 税額が出れば必要 | 所得から控除を引いて税額が残るか |
| 前の年の分を申告しないまま、1〜3月に亡くなった | 前の年の分も必要 | 前の年に申告の義務があったか |
年金を受けていた人
国税庁によると、公的年金の収入が年400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告は要りません(公的年金等に係る確定申告不要制度)。亡くなった年も、亡くなった日までの年金で同じように判断します。
- この場合でも、医療費控除や社会保険料控除などで所得税が戻るときは、申告できます。
- 外国の年金で、日本で源泉徴収されていないものを受けていた人は、この制度を使えません。
会社員だった人
国税庁によると、亡くなったことによって退職した人は、勤務先が年の途中で年末調整を行う対象です。年末調整が済んでいて、給与以外の所得が20万円以下なら、原則として準確定申告は要りません。
勤務先から、亡くなった年の給与の源泉徴収票を受け取っておきます。年末調整がされていない場合や、ほかに収入があった場合は、税務署に相談してください。
前の年の分もある場合
確定申告をしなければならない人が、1月1日から3月15日までの間に申告しないまま亡くなった場合は、前の年の分も準確定申告が必要です。期限は、前の年の分も亡くなった年の分も、知った日の翌日から4か月以内です(所得税法第124条)。
期限は「知った日の翌日から4か月以内」
所得税法第125条は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに出すと定めています。
- 3月10日に亡くなり、その日に知った場合は、7月10日が期限です。
- 期限が土曜・日曜・祝日、または12月29日〜31日にあたるときは、その翌日が期限になります(国税通則法第10条2項、同法施行令第2条)。
- 期限までに出さなかったり、税額が少なすぎたりすると、加算税や延滞税がかかることがあります。
税金が戻る場合(還付申告)の準確定申告は、所得税法第125条2項が「提出することができる」と定めており、4か月の期限は付いていません。ただし、還付を受ける権利は5年で消えます(国税通則法第74条)。早めに出します。
ほかの手続きとの順番は死亡後の手続き一覧と期限で確かめられます。期限の日付は手続きチェックリストで計算できます。
年金受給者の源泉徴収票は2〜3か月後に届く
年金を受けていた人の準確定申告には、亡くなった年の年金の源泉徴収票が必要です。
- 相続人(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹)が年金の死亡届を出した場合、日本年金機構は準確定申告用の源泉徴収票を原則として自動で送ります。送り先は、届けた人です。
- 届くのは、死亡届や未支給年金の手続きの後、おおむね2〜3か月です。
- 亡くなった日が、12月の年金支払日から翌年2月の支払日までの間なら、準確定申告用ではなく、ふつうの「公的年金等の源泉徴収票」が出ます。
- 2〜3か月たっても届かないときは、亡くなった人の基礎年金番号を用意して、ねんきんダイヤルに問い合わせます。
注意
4か月の期限に対して、源泉徴収票が届くまで2〜3か月かかります。年金の手続きは早めに済ませておきます。年金の死亡届と未支給年金の請求は年金をもらっていた人が亡くなったらにまとめています。
補足
遺族が受け取る未支給年金は、亡くなった人の所得ではありません。日本年金機構によると、受け取った遺族の一時所得になります。準確定申告には含めません。
医療費控除などの所得控除
準確定申告で使える所得控除には、亡くなった人ならではの決まりがあります。国税庁タックスアンサーNo.2022による扱いは次のとおりです。
| 控除 | 対象になるもの |
|---|---|
| 医療費控除 | 亡くなった日までに本人が支払った医療費 |
| 社会保険料・生命保険料・地震保険料控除 | 亡くなった日までに本人が支払った保険料 |
| 寄附金控除 | 亡くなった日までに本人が支出した寄附金 |
| 配偶者控除・扶養控除 | 亡くなった日の状況で判定。月割りにはしない |
- 亡くなった後に相続人が支払った入院費などは、準確定申告の医療費控除には入れられません。
- その代わり、亡くなった人の未払いの医療費として、相続税の計算で遺産から差し引ける場合があります(国税庁タックスアンサーNo.4126)。
- 配偶者控除や扶養控除は、月割りにせず、1年分を差し引けます。
ポイント
亡くなる前の入院や介護で医療費が多かった人は、年金だけの人でも、準確定申告をすると源泉徴収された所得税が戻ることがあります。病院の領収書や、健康保険から届く医療費の通知を捨てずに残しておきます。
申告書と付表の書き方の流れ
準確定申告は、ふつうの確定申告書を使います。国税庁の記載例(令和2年分)をもとにした流れは次のとおりです。
- 書類を集める。年金や給与の源泉徴収票、医療費の領収書、社会保険料や生命保険料の控除証明書、事業をしていた人は帳簿や収支の資料です。
- 確定申告書を書く。表題の「確定申告書」の前に「準」の文字を書き足します。
- 住所・氏名欄を書く。上の段に亡くなった人、下の段に相続人を書きます。上の余白に、相続人の氏名と個人番号、亡くなった日を書きます。
- 付表を添える。相続人が2人以上いるときは、「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を添えます。付表には、相続人それぞれの住所・氏名・亡くなった人との続柄などを書きます。相続人が1人なら、付表は省略できます。
- 税務署に出す。出す先は、亡くなった人の死亡当時の納税地(ふつうは住所地)の税務署です。持参か郵送で出せます。
- 納税するか、還付を受け取る。税金がかかる場合は、期限までに納めます。
相続人が2人以上いるとき
- 原則として、相続人全員が連名で1通の申告書を出します。
- 他の相続人の氏名を書いて、各人が別々に出すこともできます。その場合は、申告した内容を他の相続人に知らせる必要があります。
- 還付金を代表者がまとめて受け取るときは、付表とは別に「委任状(準確定申告書用)」を出します。
e-Taxで出す場合
国税庁によると、2020年分以後の準確定申告は、e-Taxで出せます。ただし、確定申告書等作成コーナーでは作れず、e-Taxソフトを使います。相続人が2人以上いる場合は、付表なども送信します。慣れていない場合は、書面で出すほうが確実です。
税金の行方:還付金と納めた税金
準確定申告で動いたお金は、相続税の計算にも関係します。
| 準確定申告の結果 | 相続税での扱い |
|---|---|
| 所得税を納めた | 亡くなった人の債務として、遺産から差し引ける |
| 所得税が戻った(還付金) | 亡くなった人の相続財産になる |
| 還付加算金(利息にあたるもの) | 受け取った相続人の雑所得。相続財産ではない |
いずれも国税庁の説明(タックスアンサーNo.4126、質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」)によります。相続税がかかるかどうかは相続税はかかる?基礎控除と申告期限をご覧ください。
住民税はどうなる?
住民税は、その年の1月1日に住んでいた市区町村が、前の年の所得をもとに課税します(地方税法第39条・第318条)。
- 亡くなった年の住民税(前の年の所得の分)は、亡くなっても消えません。残りの分は相続人が納めます(地方税法第9条)。
- 次の年の1月1日には住所がないため、亡くなった年の所得に対する住民税は、ふつうかかりません。
- 相続人が2人以上いる場合、市区町村から、書類を受け取る代表者を決めて届け出るよう求められることがあります(地方税法第9条の2)。
住民税の納め方や届け出の書式は市区町村ごとに違います。亡くなった人が住んでいた市区町村の税務担当の窓口(市民税課・住民税課など、名前は自治体で違います)に確かめてください。
相続放棄や借金があるとき
準確定申告で納める税金は、亡くなった人の借金と同じく、相続人が受け継ぎます。相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされます。放棄を考えている場合は、相続放棄の期限と手続きもあわせて確かめ、税務署に扱いを相談してください。
迷ったときの相談先
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 申告が必要か、書き方、期限 | 亡くなった人の住所地の税務署 |
| 事業所得や不動産所得がある、相続税もかかりそう | 税理士 |
| 年金の源泉徴収票 | ねんきんダイヤル、年金事務所 |
| 給与の源泉徴収票、年末調整 | 亡くなった人の勤務先 |
| 住民税 | 亡くなった人が住んでいた市区町村 |
準確定申告が必要かどうかは、亡くなった人の収入の種類と金額で決まります。まず年金や給与の源泉徴収票をそろえ、表の目安で判断がつかないときは、4か月の期限に余裕をもって税務署に相談してください。
よくある質問
準確定申告は必ずしなければいけませんか?
亡くなった人に、ふつうの確定申告が必要な所得があった場合に必要です。年金だけを受けていて、年金が年400万円以下、ほかの所得が20万円以下なら、原則として要りません。会社員で、勤務先が亡くなったときに年末調整をしていて、ほかの所得が20万円以下の場合も、原則として要りません。
準確定申告の期限はいつですか?
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法第125条)。たとえば3月10日に亡くなり、その日に知った場合は7月10日が期限です。期限が土日・祝日にあたるときは翌日になります。
亡くなった後に払った入院費は、医療費控除に入れられますか?
入れられません。準確定申告の医療費控除の対象は、亡くなった日までに本人が支払った医療費だけです。亡くなった後に相続人が払った医療費は、相続税の計算で、亡くなった人の債務として遺産から差し引ける場合があります。
年金の源泉徴収票はどこで手に入りますか?
日本年金機構は、相続人が年金の死亡届を出した場合、準確定申告用の源泉徴収票を、届けた人に原則として自動で送ります。手続き後おおむね2〜3か月で届きます。届かないときは、亡くなった人の基礎年金番号を用意して、ねんきんダイヤルに問い合わせます。
準確定申告で戻ってきた還付金は、誰のものですか?
国税庁は、準確定申告による還付金は亡くなった人の相続財産で、相続税の対象になるとしています。相続人が2人以上いて、代表者がまとめて受け取る場合は、委任状(準確定申告書用)を出します。
出典・参考にした資料
- 所得税法(第120条・第121条・第124条・第125条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 国税通則法(第10条・第74条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 国税通則法施行令(第2条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- 地方税法(第9条・第9条の2・第24条・第39条・第318条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
- No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)国税庁(2026-10-08 確認)
- No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人国税庁(2026-10-08 確認)
- No.1600 公的年金等の課税関係国税庁(2026-10-08 確認)
- No.2665 年末調整の対象となる人国税庁(2026-10-08 確認)
- No.2030 還付申告国税庁(2026-10-08 確認)
- No.4126 相続財産から控除できる債務国税庁(2026-10-08 確認)
- 被相続人の準確定申告に係る還付金等(質疑応答事例)国税庁(2026-10-08 確認)
- 所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について国税庁(2026-10-08 確認)
- 死亡した方の準確定申告をする場合の記載例①(令和2年分)国税庁(2026-10-08 確認)
- 年金受給者が亡くなり手続きをしましたが、どれくらいで準確定申告用の源泉徴収票が発送されますか。日本年金機構(2026-10-08 確認)
- 準確定申告(用語集)日本年金機構(2026-10-08 確認)
- 年金を受けている方が亡くなったとき日本年金機構(2026-10-07 確認)