参列のマナー

妊婦は葬儀に参列していい? 鏡の言い伝えと体調・服装、欠席の伝え方

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • 妊娠中でも葬儀に参列できます。参列を止める法律の決まりはありません。
  • 「アザができる」「鏡を懐に入れる」は各地に記録が残る言い伝えです。
  • 体調を最優先に、通夜だけ・告別式だけの参列や、香典・弔電で気持ちを伝えます。
目次
  1. 妊婦の参列についての言い伝え
  2. 参列するかどうかの決め方
  3. 妊娠中の服装
  4. 自分が遺族になったとき
  5. 欠席するときの伝え方と気持ちの届け方

妊娠中でも、葬儀やお通夜に参列してかまいません。妊婦の参列を止める法律の決まりはありません。「妊婦が葬式に出ると、生まれる子にアザができる」という話は、各地に残る言い伝えです。気になるときは、昔からの習わしどおり小さな鏡を身につける人もいます。いちばん大事なのは体調です。無理をせず、短い時間だけ参列する、香典や弔電で気持ちを伝えるといった方法も選べます。

この記事では、言い伝えの記録を地方別にまとめたうえで、参列するかの決め方、当日の過ごし方、服装、欠席するときの伝え方を説明します。

妊婦の参列についての言い伝え

国際日本文化研究センター(日文研)の「怪異・妖怪伝承データベース」には、民俗調査の報告書などから集めた俗信が載っています。妊婦と葬式にまつわる記録を、地方ごとに並べると次のとおりです(調査の報告年と県)。

地方 記録(年・県) 言い伝えの内容
東北 1976年 宮城県 死人に触れたり葬儀に出たりすると黒いアザの子が生まれる。懐に鏡を入れておけば防げる
関東 1981年 栃木県 妊娠中に葬式を見ると、子に赤いアザができる
中部 1967年 富山県 死人を見てお腹をなでると、子にアザができる
中国 1968年 岡山県 葬式を見ると白いアザができる。葬列に加わるときは鏡を懐に入れていく
四国 2004年 香川県 葬式を見ると青い(または黒い)アザができる。物陰からのぞくのがよくないので、見るなら表に出て見る
四国 1963年 愛媛県 死人に触れたり近づいたりすることを嫌う

アザの色や、何をするとよくないかは土地ごとに少しずつ違います。それでも「葬式を見る・死者に近づく」と「お腹の子にしるしが出る」を結びつける形は、東北から四国まで共通しています。火事を見るとアザができる、という似た言い伝えも各地にあります。

補足

表は、データベースの検索で見つかった記録の例です。記録が見当たらなかった地方(北海道・近畿・九州・沖縄など)に言い伝えがないという意味ではありません。家や地域によって受け止め方は大きく違います。

鏡を持つ習わし

宮城県と岡山県の記録には、「懐に鏡を入れておく」という避け方が出てきます。今でも、小さな手鏡をポケットやバッグに入れて参列する人がいます。持たなくても、参列のマナーに反することはありません。自分は気にしなくても、親や親族が気にするときは、鏡を一つ持つだけで話が穏やかに済むこともあります。

参列するかどうかの決め方

言い伝えより、いまの体調と、その日の負担の大きさで決めます。迷ったら、妊婦健診を受けている産科の医師や助産師に「この日に葬儀がある」と伝えて相談します。

  1. 体調を確かめる。つわり、お腹の張り、むくみ、出血などがある日は、無理に出ないことを考えます。
  2. 故人との関係を考える。親・きょうだい・祖父母など近い家族なら、短い時間でも顔を出したいと考える人が多いでしょう。友人・職場の関係なら、香典や弔電で気持ちを伝える方法もあります。
  3. 場所と移動を確かめる。会場までの時間、階段の多さ、駐車場から近いか、帰りの手段を確かめます。
  4. 出る場面を選ぶ。通夜と告別式の両方に出なくてもかまいません。片方だけ、焼香だけでも気持ちは伝わります。

場面ごとの負担と工夫

場面 負担になりやすいこと 工夫
お通夜 夕方から夜。帰りが遅くなる 焼香だけして早めに帰る。通夜振る舞いは辞退してよい
葬儀・告別式 長く座る・立つ。焼香の列に並ぶ 通路側や出口近くの席に座る。体調が悪ければ途中で外に出る
火葬場 移動があり、待ち時間も長い 近い家族でなければ見送りで失礼してもよい
会食(精進落とし) 席が長い。食べられない物もある 無理に食べず、早めに失礼してよい

火葬場での待ち時間は施設によって違いますが、1時間半〜2時間ほどのところが多いです。待合室の椅子や和室の有無は、葬儀社に聞けばわかります。

ポイント

受付や葬儀社の係の人に、妊娠中であることを小声で伝えておくと、椅子や控室を用意してもらえることがあります。焼香の順番を待つ間も、座っていてよいか聞いてみます。

長く立つこと・同じ姿勢を続けること

厚生労働省が定める「母性健康管理指導事項連絡カード」(母健連絡カード)は、医師が妊娠中の働き方を職場に伝えるための様式です。そこでは、むくみや腰痛、静脈瘤などの症状があるとき、「長時間の立作業」や「同一姿勢を強制される作業」を制限することが標準的な措置として挙がっています。葬儀は仕事ではありませんが、長く立ちっぱなしになる場面は同じように負担になりえます。座れる場所を確かめ、こまめに姿勢を変えます。

遠くの葬儀に向かうとき

新幹線や飛行機を使う長い移動は、日程に余裕を持って組みます。飛行機は航空会社ごとに妊婦の決まりがあります。たとえばANAの国内線では、出産予定日を含めて28日以内の人は医師の診断書(搭乗日を含め7日以内に発行されたもの)が必要です。14日以内なら、さらに医師の同伴が必要になります。乗る前に、使う航空会社の案内を確かめます。

妊娠中の服装

部分 選び方
服 黒の無地で、お腹や体を締めつけないもの。マタニティ用の喪服(ワンピース・アンサンブル)や、手持ちの黒い服で整える
足元 かかとの低い黒い靴。歩きやすく、脱ぎはきしやすいもの
防寒 冬は黒・紺・グレーなど落ち着いた色のコート。会場や火葬場は冷えることがある
持ち物 数珠、ハンカチ、母子健康手帳、飲み物、気になる人は小さな鏡

一般的な喪服の決まりは葬儀・通夜・法事の服装を見てください。

自分が遺族になったとき

親や配偶者の家族など、身内が亡くなったときは、通夜・葬儀の準備が続きます。妊娠中の人が喪主(葬儀を取り仕切る代表)を務めなければいけない決まりはありません。

  • 喪主は、配偶者やきょうだいなど、ほかの家族に頼むこともできます。
  • 役所の手続き、葬儀社との打ち合わせ、親族への連絡を家族で分けます。
  • 安置や通夜の夜は、交代で休みます。夜通し付き添う必要はありません。
  • 仕事の休みは、会社の忌引き休暇の決まりを確かめます(忌引き休暇の日数)。

亡くなった直後にすることは家族が亡くなったらすることにまとめています。

欠席するときの伝え方と気持ちの届け方

欠席するときは、遺族に短く伝えます。妊娠のことまで詳しく話す必要はありません。

  1. 伝える。電話かメッセージで、葬儀の前に知らせます。「体調のため、参列を控えさせていただきます。心よりお悔やみ申し上げます」のように短くします。
  2. 香典を届ける。参列する家族に預けるか、現金書留で送ります。書き方は香典の書き方を見てください。
  3. 弔電や供花を送る。通夜や葬儀に間に合うよう、早めに手配します(弔電の送り方、供花の送り方)。
  4. 後日に弔問する。体調が落ち着いてから、遺族の都合を聞いて自宅を訪ねます。四十九日の法要に出る方法もあります。

言葉の選び方はお悔やみの言葉の例文が参考になります。

注意

参列中や移動中に、お腹の痛みや張り、出血など、いつもと違う様子があれば、すぐに休んで、かかりつけの産科に連絡します。葬儀の途中でも、席を外すことを遠慮する必要はありません。

よくある質問

妊婦が葬式に出てはいけないのはなぜですか?

昔から「妊婦が葬式を見ると、生まれる子にアザができる」という言い伝えが各地にあるためです。国際日本文化研究センターのデータベースにも、宮城・栃木・富山・岡山・香川などの記録があります。言い伝えであって、参列を止める法律の決まりはありません。

妊婦が葬式で鏡を持つのはなぜですか?

宮城県や岡山県には「懐に鏡を入れておけばアザを防げる」という言い伝えが記録されています。気になる人や、家族や親族が気にする場合は、小さな手鏡をポケットやバッグに入れて参列する人もいます。持たなくても参列のマナーに反することはありません。

妊娠中の喪服はどうすればいいですか?

黒の無地で、お腹や体を締めつけないマタニティ用のワンピースやアンサンブルが向いています。手持ちの黒い服で整える方法もあります。靴はかかとの低い黒い靴にします。冬は黒やグレーのコートで体を冷やさないようにします。

妊娠中で葬儀を欠席するとき、どう伝えればいいですか?

遺族には「体調のため参列を控えます」と短く伝え、妊娠の詳しい事情まで話す必要はありません。香典は現金書留で送るか、参列する家族に預けます。弔電や供花で気持ちを伝える方法もあります。落ち着いてから自宅へ弔問することもできます。

出典・参考にした資料

  1. 怪異・妖怪伝承データベース(1968年 岡山県 ソウシキ・ニンシン)国際日本文化研究センター(2026-10-24 確認)
  2. 怪異・妖怪伝承データベース(1976年 宮城県 俗信)国際日本文化研究センター(2026-10-24 確認)
  3. 怪異・妖怪伝承データベース(1981年 栃木県 産育に関する俗信)国際日本文化研究センター(2026-10-24 確認)
  4. 怪異・妖怪伝承データベース(1967年 富山県 妊娠中の禁忌・俗信)国際日本文化研究センター(2026-10-24 確認)
  5. 怪異・妖怪伝承データベース(2004年 香川県 お産に関する俗信)国際日本文化研究センター(2026-10-24 確認)
  6. 怪異・妖怪伝承データベース(2004年 香川県 産育に関する俗信)国際日本文化研究センター(2026-10-24 確認)
  7. 怪異・妖怪伝承データベース(1963年 愛媛県 俗信)国際日本文化研究センター(2026-10-24 確認)
  8. 母性健康管理指導事項連絡カード(令和3年7月1日から適用の様式)厚生労働省(働く女性の心とからだの応援サイト)(2026-10-24 確認)
  9. 母健連絡カードについて厚生労働省(働く女性の心とからだの応援サイト)(2026-10-24 確認)
  10. 妊娠中のお客様(国内線)ANA(2026-10-24 確認)

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