納棺と湯灌の流れ 立ち会う人、死装束、棺に入れてよい物・入れない物
この記事の要点
- 納棺は通夜の前に行うのが一般的。葬儀社の案内で、家族が手を添えて棺に納めます。
- 湯灌は納棺前に体を洗い清めること。今は拭いて清める形が多く、希望すれば業者に頼めます。
- 棺に入れる物は、多くの火葬場が花・手紙・写真程度に。硬貨やメガネは断られます。
納棺(のうかん)は、ご遺体を棺に納めることです。通夜の前に、葬儀社の担当者の案内で、家族が手を添えて行うのが一般的です。湯灌(ゆかん)は、納棺の前にご遺体を湯で洗い清める習わしで、今は体を拭いて清める形が多くなっています。棺に入れる物(副葬品)は火葬場ごとに決まりがあり、花・手紙・写真程度にするよう求める公営火葬場が多くあります。
この記事では、納棺の流れと立ち会う人、湯灌とは何か、死装束と宗派の違いをまとめます。棺に入れてよい物と入れない物は、北海道から沖縄まで9つの公営火葬場の公式の案内を突き合わせて表にしました。
言葉の早見表
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 納棺(のうかん) | ご遺体を棺に納めること。入棺(にゅうかん)ともいう |
| 湯灌(ゆかん) | 納棺の前に、ご遺体を湯で洗い清めること |
| 清拭(せいしき) | 体をタオルやアルコールで拭いて清めること |
| 死化粧(しにげしょう) | 亡くなった人の顔を整える化粧 |
| 死装束(しにしょうぞく) | 亡くなった人に着せる衣服。仏式では経帷子(きょうかたびら)など |
| 逆さ水(さかさみず) | 水に湯を注いで温度を整えた、湯灌に使う湯 |
| 副葬品(ふくそうひん) | 棺に一緒に入れる物 |
納棺の流れ
納棺は、亡くなってから通夜までの間に行います。全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の案内では、通夜式の前に納棺し、棺を祭壇に安置するとされています。手順は葬儀社の担当者が案内してくれます。
- 体を清める(亡くなった直後〜納棺前):病院で亡くなった場合、清拭は医師や看護師がしてくれるのが普通です。自宅で亡くなった場合は、訪問看護師や葬儀社に頼めます。湯灌を希望するなら、この段階で葬儀社に伝えます。
- 着替えと死化粧(納棺の前):死装束か、故人が好きだった服を着せます。髪を整え、男性はひげをそり、顔に薄く化粧をします。
- 棺に納める(通夜の前):担当者の指示に合わせて、家族が手を添えて棺に移します。手を胸元で組み、仏式なら数珠をかけることがあります。
- 副葬品を入れる:思い出の品を入れます。ただし火葬場の決まりがあるので、入れてよい物を確かめておきます(後の表を参照)。
- ふたをして祭壇へ:棺を祭壇に安置し、その場にいる人で焼香します。
仏式では、僧侶が枕元でお経をあげる「枕経(まくらぎょう)」を、納棺の直前に行うこともあります。神式でも、神社本庁の案内によると「納棺の儀」があります。
注意
納棺のあとは、棺の中をのぞき込んだり、顔を入れたりしないでください。消費者庁は、棺の中のドライアイスによる二酸化炭素中毒が疑われる死亡事故があったとして、注意を呼びかけています。厚生労働省のガイドライン(2025年)も事業者に対し、遺族が棺を開けるときは立ち会い、1回2〜3分以内にするよう求めています。
立ち会う人
納棺に立ち会う人に決まりはありません。家族や親しい親族が立ち会い、故人と最後に触れ合う時間にすることが多くあります。北海道帯広市の葬送を調べた研究報告(2015年)があります。体を拭く、棺に入れるといった故人に直接触れる作業は、家族や親戚の役割と考えられてきたと報告されています。
小さな子どもや体調のすぐれない家族は、無理に最初から立ち会わなくてもかまいません。納棺のあと、通夜の前に対面して別れを告げる形もあります。
葬儀社に任せる部分
全互協の案内では、納棺は互助会や葬儀社のスタッフが指示し、手伝ってくれるとされています。厚生労働省は2025年10月、ご遺体を扱う事業者向けのガイドラインを出しました。湯灌や納棺で肌に触れる作業ではゴム手袋をすること、取り違えを防ぐため名札を2人以上で確かめることなどを求めています。
湯灌とは
湯灌は、納棺の前にご遺体を湯で洗い清める習わしです。辞典によると、かつては近親者がたらいの湯で洗い、使った湯は床下など日の当たらない所に捨てました。湯は、水に熱湯を注いで温度を整える「逆さ水」を使います。
今は、湯で洗う湯灌は少なくなりました。全互協の案内でも、湯灌は今日ではほとんど行われなくなったとされています。アルコールを含ませた脱脂綿で拭き清めるのが一般的です。
湯灌と納棺の担い手はどう変わったか
国立歴史民俗博物館は、全国の葬送の習わしを1960年代前後と1990年代前後で比べた資料集をまとめています。それを分析した研究報告(高橋史弥、2015年)の数字です。
| 項目 | 1960年代前後 | 1990年代前後 |
|---|---|---|
| 湯灌を家族・親戚がする | 48事例 | 31事例 |
| 湯灌を葬儀社・病院に頼む | 2事例 | 16事例 |
| たらいで洗う・逆さ水を作る | 19事例 | 7事例 |
| 湯をかける・拭くだけ | 30事例 | 35事例 |
| 湯灌に湯を使う | 33事例 | 16事例 |
| 湯灌にアルコールを使う | 10事例 | 15事例 |
| 棺に入れるのは家族・親戚 | 50事例 | 43事例 |
| 棺に入れるのに葬儀社が関わる | 2事例 | 9事例 |
(国立歴史民俗博物館研究報告 第191集「北海道帯広市域における葬送習俗の変容」が『死・葬送・墓制資料集成』を集計した数字から編集部作成。記述のある事例だけの数です)
湯で洗う形が減り、拭いて清める形が増えたことがわかります。湯灌は葬儀社や病院に任せる形が増えた一方、棺に入れる作業は、今も家族や親戚が担うことが多い結果でした。
業者に頼む湯灌
浴槽で洗う湯灌を希望するときは、葬儀社に相談すると、専門の業者を手配してもらえることがあります。同じ研究報告集の別の論文(武井基晃、2015年)は、甲府市の葬儀の例を記録しています。業者2人が部屋に専用の浴槽を運び込み、シャワーで全身と髪を30分ほどかけて洗いました。着替えと化粧まで、およそ1時間だったそうです。
この論文は、こうした湯灌は1980年代後半から東京や大阪で始まったという研究も紹介しています。寝たきりの人のための出張入浴サービスを応用したものです。費用は葬儀社や内容で大きく違い、公的な相場の調査は見当たりません。頼む前に見積もりで確かめます。
補足
エンバーミングは、湯灌とは別の処置です。体を消毒し、防腐の処置をして、ご遺体を長く保つ方法です。日本遺体衛生保全協会(IFSA)は、処置のあと10日から2週間程度は安全に保たれると説明しています。火葬までの日数が長くなるときの選択肢の一つで、くわしくはご遺体の安置場所と日数をご覧ください。
死装束と宗派の違い
死装束は、亡くなった人に着せる衣服です。全互協の案内によると、仏式の死装束は、浄土へ旅する僧や巡礼の姿になぞらえたものとされます。最近は死装束を着せることは少なく、浴衣や故人が好きだった服を着せることが多いと説明されています。
| 宗教・宗派 | 着せる物の例 |
|---|---|
| 仏式(多くの宗派) | 経帷子(白い着物)、手甲、足袋、六文銭を入れた頭陀袋、数珠など |
| 浄土真宗 | わらじ・脚絆・杖などの死装束は使わない。清潔な衣服を着せ、手を胸元で合わせて念珠をかける |
| 神式 | 神衣(白い衣、袴、足袋、烏帽子、笏、扇子など)の例がある |
| キリスト教式 | とくに決まりはなく、衣服は自由 |
(仏式と神式の例は高槻市の市営葬儀のしおり、浄土真宗は真宗大谷派、キリスト教式は全互協の案内から)
真宗大谷派は、亡くなった人は冥土に旅立つのではなく、浄土に還って仏と成ると説明しています。そのため、旅支度の死装束は意味がないとしています。
頭陀袋の六文銭は、三途の川の渡し賃とされています。ただし、本物の硬貨は多くの火葬場が断っています。持たせたい場合は、葬儀社に用意できる物を相談します。
棺に入れてよい物、入れない物
棺に入れる物は、火葬場の決まりに従います。燃えない物はお骨や火葬炉につき、燃えにくい物は火葬の時間を延ばします。有害なガスが出る物もあります。各地の公営火葬場の公式の案内を突き合わせました。
入れてよいとされる物
- 仙台市・名古屋市:少量の生花、少量の食べ物、数枚の手紙や写真程度にするよう案内しています。名古屋市は、火葬場の規則で入れてはいけない物を定め、申し込みのときにチェックシートを出してもらっています。
- 札幌市:思い出の品や愛用品は、写真に撮って、その写真を棺に入れるよう勧めています。
- 高知市:お別れの花は禁止していません。ただ、葉や茎を取り、花の部分だけを入れるよう求めています。色の濃い花は、お骨に色が移ることがあるそうです。
- 沖縄県のいなんせ斎苑:添える花は最小限にし、そのほかの品は火葬のあとに骨つぼに納めるよう求めています。全互協も、どうしても入れたい物は火葬後に骨つぼへ納めるよう勧めています。
入れないよう求められている物
| 物 | 公式の案内で入れないよう求めている例 | おもな理由 |
|---|---|---|
| メガネ・腕時計などのガラスや金属 | 札幌・仙台・千葉・名古屋・大津・倉敷・高知・福岡・那覇(いなんせ斎苑) | 溶けてお骨や炉につく |
| 硬貨・お金・貴金属 | 札幌・仙台・倉敷・高知・福岡・那覇 | お骨につく。なくなったと誤解される |
| 携帯電話・スマートフォン | 札幌・仙台・倉敷 | 破裂のおそれ |
| スプレー缶・電池・ライター | 9施設すべて | 炉の中で破裂する |
| 厚い本・アルバム・大量の紙 | 9施設すべて | 燃えにくく、灰が多く出る |
| ぬいぐるみ・布団・毛布 | 9施設すべて | 燃えにくい |
| プラスチック・ビニールの物(バッグ・靴・おもちゃ・人形) | 9施設すべて | 有害なガスや燃え残り |
| 果物(大きな物や多い量) | 9施設すべて | 燃えにくい、においが出る |
| 酒・ジュース | 仙台・名古屋・大津・福岡・高知(缶飲料)・倉敷(液体入りのペットボトル) | においや煙、破裂 |
| ゴルフクラブ・釣りざお(カーボン製) | 札幌・仙台・千葉・倉敷・高知・福岡 | 炉の故障 |
| ドライアイス | 札幌・仙台・名古屋・大津・倉敷・高知・那覇 | 燃焼を妨げる。出棺前に取り除く |
(札幌市・仙台市・千葉市・名古屋市・大津市・倉敷市・高知市・福岡市・いなんせ斎苑の公式の案内から編集部作成。2026年10月時点。書き方は施設ごとに違い、「果物」は大きな物だけを挙げる施設もあります)
倉敷市中央斎場は、このほかに数珠、千羽鶴、補聴器、CDも挙げています。棺に入れる前に、葬儀社を通して火葬場の決まりを確かめると安心です。札幌市やいなんせ斎苑は、決まりを守らずに炉が壊れた場合は、損害賠償を求めることがあるとしています。
ポイント
ペースメーカーを入れていた人は、必ず事前に伝えます。火葬中に破裂するおそれがあるためです。札幌市・仙台市・千葉市・名古屋市・大津市・高知市・福岡市が事前の連絡を求めています。いなんせ斎苑は、医師と相談して出棺前に取り出すよう求め、難しい場合は事前に連絡するよう案内しています。
地域で違うこと
湯灌や納棺のやり方は、地域や時代でも違います。国立歴史民俗博物館の研究報告(2015年)に載った各地の例です。調査の時期は報告ごとに違います(1990年代〜2010年代)。
| 地域 | 以前 | 調査の時点 |
|---|---|---|
| 北海道帯広市 | 湯で洗う時代は確認できず、布で拭いていた | ほぼアルコールで拭く。棺に入れるのは家族・親戚 |
| 山形県高畠町 | 近親者が湯灌。死装束は隣組(近所の組)が作った | 病院の清拭に代わり湯灌は省略。死装束は葬儀社が用意 |
| 山口県下関市(角島) | たらいに水を入れてから湯を足し、子どもたちが体を洗った。湯灌と納棺は亡くなった翌日 | たらいは使わず、タオルで全身を拭くだけ。亡くなった日の夕方に湯灌と納棺を済ませた例も(1995年の調査) |
山形県高畠町の例では、以前は通夜の翌朝に棺に入れていたのが、今は順番が逆になったと報告されています。地域の習わしが気になるときは、地元の親族や葬儀社に聞くのが確実です。
通夜の流れはお通夜とは、安置中のドライアイスの扱いはドライアイスの量・費用・交換の目安にまとめています。
よくある質問
納棺はいつ行いますか?
通夜の前に行うのが一般的です。全日本冠婚葬祭互助協会の案内でも、通夜式の前に納棺し、棺を祭壇に安置するとされています。時刻は、葬儀社と相談して決めます。
湯灌は必ずしなければいけませんか?
必ずしなくてかまいません。湯灌は、納棺の前にご遺体を湯で洗い清める習わしです。今は病院で看護師が体を拭いて清める(清拭)ことが多く、湯灌を省くこともよくあります。浴槽で洗う湯灌を希望するときは、葬儀社に相談すると専門の業者を手配してもらえることがあります。
棺に入れてはいけない物は何ですか?
火葬場ごとに決まりがあります。多くの公営火葬場が、メガネや腕時計などのガラス・金属、プラスチック製品、携帯電話や電池、厚い本やアルバム、大きな果物、ぬいぐるみなどを入れないよう求めています。名古屋市や仙台市は、入れる物を花、少量の食べ物、数枚の手紙や写真程度にするよう案内しています。
六文銭(硬貨)は棺に入れてもいいですか?
本物の硬貨は入れられない火葬場が多くあります。仙台市の葛岡斎場は、いわゆる「たび銭」を厳禁としています。札幌市・倉敷市・高知市・福岡市の火葬場も、硬貨やお金を入れないよう求めています。六文銭を持たせたいときは、葬儀社に用意できる物を相談します。
浄土真宗では死装束を着せないのですか?
真宗大谷派は、わらじ・脚絆・杖などのいわゆる死装束は用いないと説明しています。亡くなった人は冥土に旅立つのではなく、浄土に還って仏と成ると考えるためです。湯灌をし、清潔な衣服を着せて、両手を胸元で合わせて念珠をかけて納棺するとしています。
出典・参考にした資料
- 納棺(デジタル大辞泉)コトバンク(小学館)(2026-10-08 確認)
- 湯灌(デジタル大辞泉・改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典)コトバンク(2026-10-08 確認)
- 経帷子(デジタル大辞泉)コトバンク(小学館)(2026-10-08 確認)
- お葬式のマナー:着替えと納棺は?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
- お葬式のマナー:清拭と死後処理のしかた一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
- お葬式のマナー:仏式葬儀での臨終から納棺までの手順は?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
- お葬式のマナー:遺体の安置と枕飾りは?一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(2026-10-08 確認)
- 葬儀・法事・お墓のこと(納棺の際の衣服は?)真宗大谷派(東本願寺)(2026-10-08 確認)
- 神葬祭神社本庁(2026-10-08 確認)
- 市営葬儀式場のしおり高槻市(2026-10-08 確認)
- 事業者等における適切な御遺体の取扱い等に関するガイドライン(令和7年10月29日)厚生労働省(2026-10-08 確認)
- 棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意消費者庁(2026-10-08 確認)
- 北海道帯広市域における葬送習俗の変容(高橋史弥、国立歴史民俗博物館研究報告 第191集、2015年)国立歴史民俗博物館(2026-10-08 確認)
- 葬祭業者の利用と料金の実態(武井基晃、国立歴史民俗博物館研究報告 第191集、2015年)国立歴史民俗博物館(2026-10-08 確認)
- 山形県置賜地方における葬送墓制習俗の変化:高畠町時沢の追跡調査から(小田島建己、国立歴史民俗博物館研究報告 第191集、2015年)国立歴史民俗博物館(2026-10-08 確認)
- 葬送習俗の民俗変化1:血縁・地縁・無縁(新谷尚紀、国立歴史民俗博物館研究報告 第191集、2015年)国立歴史民俗博物館(2026-10-08 確認)
- エンバーミングとは一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)(2026-10-08 確認)
- 斎場利用のご案内(副葬品の制限について)札幌市(2026-10-08 確認)
- 副葬品に関するお願い(葛岡斎場)仙台市(2026-10-08 確認)
- 千葉市斎場 利用のご案内(リーフレット)千葉市(2026-10-08 確認)
- 副葬品等についてのお願い名古屋市(2026-10-08 確認)
- 副葬品の制限について大津市(2026-10-08 確認)
- 倉敷市中央斎場 利用案内(令和6年4月1日)PFI倉敷中央斎場株式会社(倉敷市中央斎場の管理者)(2026-10-08 確認)
- 副葬品について高知市(2026-10-08 確認)
- ご利用案内(副葬品について)福岡市葬祭場 刻の森(2026-10-08 確認)
- いなんせ斎苑 ご利用案内南部広域市町村圏事務組合(2026-10-08 確認)