お墓と供養

散骨のルールと方法 法律と厚労省の指針、条例のある自治体と改葬許可

更新 文 みおくり手帖 編集部

この記事の要点

  • 墓地埋葬法に散骨を禁じる規定はなく、国は節度ある散骨は違法でないとの立場です。
  • 厚労省の指針は、遺骨を粉状にし、決めた区域か陸から離れた海でまくよう求めます。
  • 条例で散骨を禁じる町や許可制の市もあります。まく場所の自治体に確かめます。
目次
  1. 散骨は法律でどう扱われているか
  2. 厚生労働省の散骨ガイドライン(2021年)
  3. 散骨を規制している自治体の条例
  4. 海洋散骨・山林散骨の注意点
  5. 粉骨(遺骨を粉にする)
  6. お墓の遺骨を散骨するとき(改葬許可との関係)
  7. 散骨の前に家族で決めておくこと
  8. 業者に頼むときに確かめること

散骨(さんこつ)は、火葬した遺骨を粉にして、海や山などにまく葬り方です。墓地埋葬法には散骨を禁止する規定がなく、国もそう説明しています。ただし、何をしてもよいわけではありません。厚生労働省が2021年に公表した「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」は、遺骨を粉状にし、あらかじめ決めた区域か、海岸から一定の距離以上離れた海でまくことを求めています。

条例で散骨を禁じる町や、散骨場を許可制にする市もあります。お墓から取り出した遺骨をまく場合、国の見解では改葬許可は要りませんが、扱いは市区町村で違います。この記事では、法律の考え方、国の指針、散骨を規制している自治体の条例を地方別にまとめ、まく前に確かめる手順を整理しました。

散骨は法律でどう扱われているか

禁止する規定はない

墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)は、遺体を土に葬る「埋葬」、遺骨をお墓に納める「埋蔵」、納骨堂に納める「収蔵」を定めています。散骨は、このどれにもあたらない葬り方で、法律に規定がありません。

東京都保健医療局は、国の見解として「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない」という言葉を紹介しています。あわせて国は、人々の意識や宗教的な感情の動きを注意して見ていく必要がある、としています。

刑法との関係

刑法第190条は、遺骨を「損壊し、遺棄し、又は領得した者」を罰すると定めています。散骨がこれにあたるかについて、旧厚生省の「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」が1998年に報告書をまとめています。報告書は、相当の節度をもって行う場合は、散骨を処罰の対象にできないと解されている、としました(総務省行政評価局の2023年の報告書による)。

つまり、散骨が認められるのは「節度をもって行う」ことが前提です。

注意

遺骨を土に埋めると、散骨ではなく「埋蔵」になります。墓地埋葬法第4条は、墓地以外の場所での埋蔵を禁じています。山や自宅の庭に穴を掘って遺骨を埋めることはできません。東京都も、個人が庭などに墓地をつくることは法令上認められないとしています。

厚生労働省の散骨ガイドライン(2021年)

厚生労働省は、令和2年度の研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」でまとめた「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」を、同省のサイトに掲載しています。散骨を仕事として行う事業者に向けたものですが、個人でまく場合も目安になります。

項目 ガイドラインの内容
散骨とは 適法に火葬した遺骨を粉状に砕き、陸地や水面にまく、または投下すること
遺骨の形 骨とわからないよう粉状に砕く
陸でまく場所 あらかじめ特定した区域(川と湖沼を除く)
海でまく場所 海岸から一定の距離以上離れた海域
まわりへの配慮 地域の住民、土地の所有者、漁業者などの利益や宗教感情を害さない
自然への配慮 プラスチックやビニールの副葬品などを投下しない
契約 約款を公表し、文書で契約し、費用の明細書をつける
散骨のあと 散骨したことを証明する散骨証明書を渡す
安全 陸は歩道や柵、海は乗組員の配置やライフジャケット
公表 散骨の件数や場所を年度ごとに公表する

ガイドラインは、事業者に、墓地埋葬法、刑法、廃棄物処理法、海上運送法、民法などの法律と、自治体の条例やガイドラインを守るよう求めています。法律ではないので罰則はありませんが、業者を選ぶときの物差しになります。

散骨を規制している自治体の条例

国が細かいルールを決めていないため、散骨をどこまで認めるかは、各自治体の判断に任されています。条例の中身は、大きく3つに分かれます。

  1. 散骨そのものを禁止する:墓地以外で遺骨をまくことを禁じる
  2. 原則禁止で、条件つきで認める:届出や承認をすれば、決まった条件の場所でまける
  3. 散骨場を許可制にする:散骨の場所を設ける事業者に、市町村長の許可を求める

各自治体の例規集で条文を確かめた例です。

地方・自治体 条例 決まりの中身
北海道・長沼町 長沼町さわやか環境づくり条例(2005年) 墓地以外での遺骨の散布を禁止(第11条)
北海道・岩見沢市 岩見沢市における散骨の適正化に関する条例(2007年) 散骨場は許可制。それ以外の場所は事前に市長へ届出(第7条・第8条)
東北・松島町(宮城県) 松島町環境美化の促進に関する条例(2010年) みだりに遺骨を散布することを禁止(第8条)
関東・秩父市(埼玉県) 秩父市環境保全条例(2008年改正) 墓地以外は原則禁止。隣地の同意か境界から100m以上などの条件で届出(第36条、規則第23条)
関東・湯河原町、箱根町(神奈川県) 散骨場の経営の許可等に関する条例(2014年、2015年) 散骨の事業は町の許可が必要
関東・三浦市(神奈川県) 三浦市散骨場の経営等の許可等に関する条例(2025年) 散骨場は許可制。川・湖などの水域での散骨を禁止。公園・道路・海岸や他人の土地も、権原がなければ禁止(第18条)
中部・諏訪市(長野県) 諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例 散骨場の経営は市長の許可(第3条)
四国・愛南町(愛媛県) 愛南町散骨事業等の適正化に関する条例(2018年) 散骨の事業は町長の許可
九州・南阿蘇村(熊本県) 南阿蘇村環境美化条例(2020年改正) 墓地以外での遺骨の散布を禁止(第8条)
九州・伊佐市(鹿児島県) 伊佐市環境保全及び美化推進条例(2020年改正) 原則禁止。隣地の同意と境界から100m以上などの条件で市長の承認(第12条、規則第2条)

(各自治体の例規集から編集部作成。年は制定・改正の年。三浦市の禁止は海域を除く)

長沼町と松島町の条例は、遺骨をまく場所を提供することを仕事にした人に、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金を定めています。このほか、一般財団法人地方自治研究機構のまとめでは、静岡県の御殿場市・熱海市・伊東市・三島市、埼玉県本庄市にも散骨場を規制する条例があります。

海洋散骨の指針を定める市もある

条例とは別に、海での散骨について指針を定めている市もあります。どちらも、観光や漁業への風評被害を防ぐことを目的に挙げています。

市 海でまく場所の目安 ほかの主な内容
熱海市(静岡県、2015年) 市内の陸地(初島を含む)から10km以上離れた海域 夏は控える。粉にした遺骨を水に溶ける袋に入れて海面へ
伊東市(静岡県、2016年) 市内の陸地から6海里(約11.11km)以内ではまかない 自然に還らないものをまかない

(各市の公式サイトの指針から編集部作成)

まく場所の決まりを調べる手順

  1. まく場所がどの市区町村か確かめる。海なら、近い陸地の市町村です。
  2. 「〇〇市 散骨 条例」「〇〇町 散骨」で検索する。環境美化条例の中に決まりが入っていることもあるので、「焼骨 散布」でも探します。
  3. 市区町村の担当課に電話する。生活衛生、環境保全、市民生活の担当などが窓口です。東京都も、念のため地元の自治体に確認するよう勧めています。
  4. 業者に頼む場合は、その場所の条例や指針を守っているか聞く。

海洋散骨・山林散骨の注意点

まく場所 主な注意
海 陸から離れた沖でまく。漁場や海水浴場を避ける。花束の包装なども流さない
山林・陸地 決めた区域でまく。土地の所有者の同意。近所の人の目に触れないように
川・湖 国のガイドラインは陸上の散骨場所から川と湖沼を除いている。三浦市などは条例で禁止
自宅の庭 骨が風で飛ぶ、近所の人が気分を害することがある。埋めるのは不可

東京都は、海や川での散骨は水産物への風評被害、山での散骨は土地の所有者や近所の人とのトラブル、農産物への風評被害のおそれがあると注意しています。

船を使う散骨

国土交通省は2023年9月、海で散骨をする事業者が守るべき海の法律を整理した解説を公表しました。遺族を乗せて船を出すなら、海上運送法の手続きが要ります。乗せる人数が13人以上の船は許可、12人以下の船は登録が必要です。船長は、乗った人に救命胴衣を着せることになっています。

業者の船に乗るときは、事業の許可や登録を受けているか、保険に入っているかを聞いておくと安心です。

粉骨(遺骨を粉にする)

火葬したあとの遺骨は、形が残っています。国のガイドラインは、骨とわからないよう粉状に砕くことを求めています。熱海市の指針は、粉にした遺骨を水に溶ける袋に入れて海面に投下するよう求めています。

粉にした遺骨は、元の形に戻せません。全部を粉にするか、一部を残すかを先に決めます。

補足

公営の墓地や納骨堂でも、粉にした遺骨を受け入れる区分を設けているところがあります。例えば京都市の深草墓園納骨堂は、永年の納骨で「粉状焼骨区分」を選ぶと、市が粉骨作業をしたうえで合葬します。散骨をやめて別の方法にする場合の選択肢として、知っておくとよいでしょう。

お墓の遺骨を散骨するとき(改葬許可との関係)

墓じまいなどで、お墓の遺骨を取り出して散骨することがあります。

改葬(遺骨を別のお墓や納骨堂に移すこと)には、市区町村長の許可が要ります(墓地埋葬法第5条)。一方、取り出した遺骨を散骨する場合について、厚生労働省は改葬許可は必要ないとの見解を示しています(総務省行政評価局の2023年の報告書による)。散骨は、別のお墓や納骨堂に移すことではないためです。

ただし、東京都は、散骨のために取り出す場合の扱いは区市町村によって異なるとしています。次の順で確かめます。

  1. お墓がある市区町村に電話する。散骨のために遺骨を取り出すとき、届出や書類が要るかを聞きます。
  2. 墓地の管理者(寺院・霊園)に相談する。取り出しの手続き、閉眼供養、区画の返し方を確かめます。
  3. 散骨の日と場所を決める。まく場所の条例を確かめます。業者に頼む場合は、お墓から取り出した遺骨であることを事前に伝えます。

墓じまいの全体の流れは墓じまいの手順と費用にまとめています。

散骨の前に家族で決めておくこと

散骨は、あとから「やはりお墓が欲しい」と思っても、まいた遺骨は戻りません。次のことを家族や親族で話し合っておきます。

  • 全部まくか、一部を残すか。残した遺骨を自宅に置くことに、墓地埋葬法の決まりはありません(東京都の案内)。別のお墓や納骨堂に納めるときは、管理者が出す証明書類が必要です。
  • お参りの場所をどうするか。散骨したあとは手を合わせる場所がなくなります。一部をお墓や納骨堂に納める家族もいます。
  • 親族の理解。故人の希望でも、反対する親族がいればトラブルになりやすいです。
  • 記録を残す。まいた日・場所(海なら緯度・経度)を記録し、業者に頼んだら散骨証明書を受け取ります。

業者に頼むときに確かめること

確かめること 見るポイント
契約 約款があるか。文書で契約し、費用の明細書をもらえるか
費用の範囲 粉骨、乗船人数、献花、証明書の発行が含まれるか
まく場所 どこでまくか。その場所の条例や指針を守っているか
船の手続き 海上運送法の許可や登録を受けているか。救命胴衣と保険
散骨証明書 散骨のあとに受け取れるか。日時と場所が書かれるか
立ち会わない場合 代わりにまく「委託散骨」の報告のしかた
解約 途中でやめたときの扱い

散骨の費用について、調査主体を名指しできる全国の相場は見つかりませんでした。内容で金額が大きく変わるので、複数の業者で見積もりをとり、総額で比べます。納得できない請求を受けたら、消費者ホットライン(局番なしの188)で相談できます。

ほかの供養の方法は、永代供養とは、樹木葬とは、納骨堂とはで説明しています。

よくある質問

散骨は違法ですか?

墓地埋葬法には、散骨を禁止する規定はありません。国はこの見解を示しており、刑法の遺骨遺棄罪についても、相当の節度をもって行う場合は処罰の対象にならないと解されています。ただし、遺骨を土に埋めると墓地以外での埋蔵になり、法律に触れます。条例で散骨を禁じている自治体もあります。

散骨に許可や届出は必要ですか?

国の法律には、散骨の許可や届出の制度はありません。ただし、岩見沢市(北海道)や秩父市(埼玉県)、伊佐市(鹿児島県)のように、条例で届出や承認を求める自治体があります。まく場所の市区町村に、事前に確かめてください。

自宅の庭に散骨してもいいですか?

東京都は、骨が風で飛ばされたり、近くに骨がまかれたことで気分を害する人が出たりすると注意しています。庭に遺骨を埋めてお墓にすることは、法律で認められていません。家を手放したあとのことも考え、慎重に決めます。

お墓の遺骨を散骨するのに改葬許可は要りますか?

厚生労働省は、墓じまいで取り出した遺骨を散骨する場合、墓地埋葬法の改葬許可は必要ないとの見解を示しています。ただ、東京都は、散骨のために取り出す場合の扱いは区市町村で異なるとしています。お墓のある市区町村と、墓地の管理者に手続きを確かめます。

遺骨の一部だけ散骨できますか?

できます。残りを自宅に置くことに、墓地埋葬法の決まりはありません。残りを別のお墓や納骨堂に納めるときは、管理者が出す証明書類が必要です。どの遺骨をどうするか、家族で決めておくと後で迷いません。

出典・参考にした資料

  1. 墓地、埋葬等に関する法律(第2条・第4条・第5条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
  2. 刑法(第190条)e-Gov法令検索(2026-10-08 確認)
  3. 散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)厚生労働省(2026-10-08 確認)
  4. 墓地・埋葬等のページ厚生労働省(2026-10-08 確認)
  5. 散骨に関する留意事項東京都保健医療局(2026-10-08 確認)
  6. 墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-結果報告書(法に照らした運用上の疑義・参考 散骨について)総務省行政評価局(2026-10-08 確認)
  7. 墓じまいに関する情報収集結果総務省 東北管区行政評価局(2026-10-08 確認)
  8. 海上散骨に関するガイドラインを策定しました。国土交通省(2026-10-08 確認)
  9. 海上において散骨をする場合において遵守すべき海事関係法令の解説国土交通省(2026-10-08 確認)
  10. 長沼町さわやか環境づくり条例(第11条)北海道長沼町(2026-10-08 確認)
  11. 岩見沢市における散骨の適正化に関する条例北海道岩見沢市(2026-10-08 確認)
  12. 松島町環境美化の促進に関する条例(第8条)宮城県松島町(2026-10-08 確認)
  13. 秩父市環境保全条例(第36条)埼玉県秩父市(2026-10-08 確認)
  14. 秩父市環境保全条例施行規則(第23条)埼玉県秩父市(2026-10-08 確認)
  15. 諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例(第3条)長野県諏訪市(2026-10-08 確認)
  16. 湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例神奈川県湯河原町(2026-10-08 確認)
  17. 箱根町散骨場の経営の許可等に関する条例神奈川県箱根町(2026-10-08 確認)
  18. 三浦市散骨場の経営等の許可等に関する条例(第18条)神奈川県三浦市(2026-10-08 確認)
  19. 愛南町散骨事業等の適正化に関する条例愛媛県愛南町(2026-10-08 確認)
  20. 南阿蘇村環境美化条例(第8条)熊本県南阿蘇村(2026-10-08 確認)
  21. 伊佐市環境保全及び美化推進条例(第12条)鹿児島県伊佐市(2026-10-08 確認)
  22. 伊佐市環境保全及び美化推進条例施行規則(第2条)鹿児島県伊佐市(2026-10-08 確認)
  23. 熱海市海洋散骨事業ガイドライン策定静岡県熱海市(2026-10-08 確認)
  24. 「伊東市における海洋散骨に係る指針」の制定について静岡県伊東市(2026-10-08 確認)
  25. 散骨を規制する条例(条例の動き)一般財団法人地方自治研究機構(2026-10-08 確認)

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